トラフカミキリは幼虫が「生木食い」で、発生木となったクワをやがて枯らせてしまう。
目黒区の東京科学大学構内では、この10数年で既に少なくとも5−6本のクワがトラフカミキリのために枯れて伐採されてしまった。
発生木が枯れると、当のトラフカミキリはさらなる繁殖の場を失って困ることになるのではと思うのだが、実はそうでもない。
トラフカミキリを連年観察していると、とある場所のすべてのクワから同時に多数発生しているわけではない、ということがわかってくる。発生木として利用しているクワとは別のクワを、あたかも将来の発生木として「温存」しているのだ。
昨年までこの大学構内での主な発生木であったクワ↓ ついに今年は枯れてしまった。
これ↓は、数年前までトラフカミキリの発生の痕跡がなく、自分にとってノーマークだったクワ↓
幹を見てみると、トラフカミキリのものと思われる多数の脱出口があって驚いた。
そして、このクワで自分は初めてトラフカミキリを見た↓(7月12日撮影)
このクワ↓は、発生数が少ないながらこれまでも発生木だったが、このところ脱出口が増えてきている。
要するに、主な発生木が徐々にシフトしているのである。
このような「生存戦略」により、この大学構内でのトラフカミキリの繁殖は当分続いていくものと考えられる。
なお、クワは枯れた木から「ひこばえ」が出る。また、いろいろな場所から若木やその予備軍が生えている↓ それらがすべて成木に育つわけではないが、どれかは成木となるだろう。このことから、トラフカミキリの生息環境は将来的にも安泰ではないか。
ただし、ひとつ分からないことがある。
クワをホストとするカミキリムシは、トラフカミキリに限らない。クワ、キボシ、ヨツスジトラ、そしてゴマダラカミキリがいる。その中で、最近の都区部では、トラフカミキリが優占種となっている感がある。しかし、過去には、トラフカミキリが珍しかったという記録がある(過去の東京都RDB、大田区調査など)。
都区部における群雄割拠の中でこのところトラフカミキリが大名として安泰な地位を維持しているのは、どのような理由によるものだろうか。
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