【あなたの心に】 土曜日は横浜中華街の中華料理店で、小学校の同窓会だった。ぼくのかよったのは江ノ電でいうと極楽寺にある稲村ヶ崎小学校で、年一度の同窓会が二十年以上にわたり励行されるほど仲がよい。鎌倉は一般的なイメージとしては観光地だろうが
【不明】 野に四、五人でいながらかずのあいだがつくられているとそれぞれにおもうときがあってそうしたかげのかろやかさをはたからながめあえばうれしく片手をとなりの肩にかけどこまでがひとかわからないぜんたいをしるしている日などかまえとたたえの
【李下】 とおいこもれびのなかをすぎこちらへとむかってくるひとは着衣であってもはだかみにみえるいぜんそうしるしたことがあったがそのわけをかんがえはしなかったからだの凹凸がしるくかんじられるとかあらわれのなりゆきがひとつの黄金におもわれる
【ほそいフーガ】 なかみに紐のおりているのみものをのみながら舌でひきよせてゆくとめだまのうちがわに幕がおりてくらくなってゆくのが味といえたよのなかの塔はかたむいてゆくうまいみるくでしょうといわれてついみやったそとをたれる紐も一樹さながら
【望遠】 手でつくるらちに牧があればおなじひろさへふる雨もみえたはまからさきがそのようにふられなみのうえにとおく牧がかたむいておいた馬らはそれぞれの並み足でしろいたてがみをうつらせていった
【さきゆき】 かぞえなどいつもほしいままでふいに隻腕とみえるあのひとの角度が屈んでみずのほとりにふれているみだれをおわりなくみおろせばかたちへのかぞえすらふかくなりたりなさをかわらずゆめみることがむしろあのひとをうごかしているそうわかり
【内側】 ぬかどこのにおいのするくりやもしくは水屋はきられた石でかこわれたつめたいくらがりだったがあじさいの青球がありほおをこすりながらそのうちがわをたべたゆるやかな球というものはくちにするとほぐれてこれがさらにつめたいとかおをすばるに
【近況・8月17日】 年末あたりに刊行しようとしているあたらしい詩論集の内容を確定すべく、先週まで目次の最後にあたる(だろう)江代充論に励んだ。 詩論にはいろいろかたちがあるだろう。原理的な詩論(そこでは「詩とはなにか」が至上命題となる)
【くずれる】 それじしんの皮がやぶれなかのあふれておりるのがくずれる というかたちの恍惚だとするならあちらからこちらへとちからをもちはこぶちかづきもおしなべてわたしへくずれているすいへいに重力がわたりこまごま樹幹をうめている紐が眼の奥へ
自慢ではないが、女房とじゃんけんするとぜったいに負ける。一回じゃんけんならその場のなりゆきで勝つこともあるが、五回じゃんけんでは、たぶん勝ったことがない。「ありえないこと」のようだが、事実はじっさいそのようにくりかえされている。くやしいの
【くいた】とおりあめがとおりぬけてきみのからだをすこしぬらすとくさのわけみちもとおりとなってそのふかい中途できみのくびがしずかにうつむいたとみえたそらをおもわしめしぐさがふたえにみえにと曇るんだなそれがすがたの階段ならきみのちちぶさのたか
【江代充について5】 (承前) 時間推移にかかわる江代的想起は、「たりなさ」と熾烈にむすびつく。ある局面からそれが円満する局面までの詩篇内推移をみたすのはじつは「たりなさ」で、これがありようとして喩辞や被喩辞のすくなさ、もしくはそれらの消
【江代充について4】 (承前) まずは江代充『白V字 セルの小径』から現代詩文庫未収録の以下の詩篇を引こう。いま入手できる現代詩文庫にはいっていないものをことさら引くのは、一種の読者サーヴィスにすぎない。みたところ、文庫収録/未収録の区別
【ひだ】 ふと耳にしたひびきがたとえなりゆきのわからぬ異国語だったとしても一節がキャニオーンときこえればうたのぬしはあの世までおおくの谿をかぞえてきたのかおもいえがきも夜来の雨でぬわれてしまうあのやま道にかたむけてひとをこぼした馬車をそ
昨日は研究室で、黙々と期末提出レポートの採点をしていた。うち「国語表現法」では「奇妙な文章をピックアップして、その構造を解析してほしい」という単純な課題をだしたのだが、意外に詩のピックアップがおおく、すこしびっくりした。教員の属性が配慮さ
(承前) 『昇天 貝殻敷』につづく『みおのお舟』では、「想起」にたいし(妙な用語になるが)「事実生起の写生」の気味合いがよりつよくなり、ほんのわずかだが、詩篇の趨勢が「よりながくなる」。気をつけるべきは、江代詩では回想が想起にずれる換喩的
(承前) 江代充の詩にかかわる印象として共通していわれるのは、「静謐」「敬虔」だろう。うち「敬虔」についてはのちに解析するが、「静謐」なら(とくに日本語の用例として)吉本隆明が『言語にとって美とはなにか』で展開したような分類も可能だ。まず
【柱状】 ささげもつのにひつようなのはもはやてわたすあいてでなくあるくおのれだと念に押すにがいめぐすりをさしたゆえか暑いさかりへ霜ばしらがかさなりおもいのほか道がざくざく音をたてる手からむかっているそれがシラクサじぶんが刃物になっている
【江代充について2】 (承前) 前回書いたことで、江代充の詩は「たりない」――だから読者は文意を補って読むひつようがある――もしそうおもわれたとしたら、それは誤解だ。ことばは、たりなさにめぐられたそれぞれの真芯に、かえって充実している。理
本日(8/6)の北海道新聞夕刊に、ぼくの連載コラム「サブカルの海泳ぐ」の第17回が掲載されます。今回のテーマはクロソフスキー→ボードリヤール由来ともいえるシミュラクル。しかもそれがゆがむことで生じる「笑い」の先端性をあつかっています。 串
【江代充について1】 江代充の第三詩集『みおのお舟』(89)、その巻頭(つまり大切な位置)に計7行、短詩といっていい詩集標題作「みおのお舟」が収録されている。まずはその全篇を引こう。 【みおのお舟】 みどりのおい繁る洗い場のかげでながれる
どうも最近の日々が冴えない。課題がすすまないこともあるのだが、やはり日中暑いのが要因のようだ。札幌の現在は最高気温30℃ていどで、暑気災害連続の本土からすれば手ぬるいとおもわれるだろうが、クーラーなし(札幌のマンション部屋のおおむねはそう