22 次第の用例はひろすぎるとおそれつつひとものの謎めいた次第をみおさめると雪上で夜空のおおきくまわることがさえたきらぼしからゆっくりとわかり次第といえないけものがおくまっていた
21 滝のもんだいは制止が効かずひくきをながれるべき水がいきなり大奈落へと抛られるおわりをつづけたということだあの切り立ちは尖端だったがたしかに八月の髪としてみえた
20 あるいはすでにはじまっていると手のなさけなさをわらうことができなにごとかあわくとりにがそうとして影絵がうごくのをしたからみあげる空のやわらかいくぼみをさぐりあてずえがきとしぐさの隔絶がはじまればくらいくずれに手もかようのみだ
19 あぶらとかおりとこまかな肌理またはかすかなかわきの気配によりくるみの木はそこだけの森としてゆるやかに頭上でたしかめられおくれを全うするため実をおとすその時間へとあみこまれてゆく
18 相対性をかんじさせるものはいつもうすいたとえばこいびとの背たけなどがそれでとくべつなながさならしろさとしてうごくまなこもしくは遠望をあらしていっては朝をみかえる身のひねりがおのれへの破邪のちからとなり浪のまえにおさまる
17 くちでするゆううつのひびきにゆっくりさせるさそいがあり停滞とちがうはずだとはげますみんなとおくからやってきたのだあおめく髪をゆうらりゆらす森のありあけをくもり眼にみてしきさいくずれるうごきさえいろがらをいろとはさだめない
16 神がかったゆるしにもつながるのだからあきらめや疲れをわるいとおもっていないそれらのなさはありえないとかんじているとあきらめや疲れのうつくしくあるひとのからだのさずけから声のなかの声がながれ(そんなあふれがゆるしなのだろうか)方向のなさ
15 皮膚のくずれる日は影に身を置きあこがれる空のひかりを防いだ木造へもたれ蝉のとしよりとなるわたしのみいらをひびかせれば半音のずれがみなぎりをくぼませ緒のなくなったながさでゆらめいた
【吉田恵輔監督・脚本『犬猿』】 初期作品の評判は聞き及んでいるが、吉田恵輔監督作はまだ『銀の匙』『ヒメアノ〜ル』しか観ていない。それでもその二作で話法のあざやかさに魅了されてきた。ビルドゥングスロマンにおける進展80%と暗転20%を快調にえが
14 遊侠と嫌悪とがからだをさいなむあおじろさのいっときは去ったおなじ属からあふれかえってくるおんなたちのてりはえたあらわれは尻のあつみに流行などあるものの恋のすべてを不易としてちかづけた
【吉田大八監督『羊の木』】 講談社のコミック雑誌「イーブニング」に連載、現在は全五巻の単行本として完結している山上たつひこ原作、いがらしみきお作画の『羊の木』はつとに傑作のほまれがたかいが、不勉強の至りで、未読のままだった(山上『光る風』
13 とぶうちに舌が百まであつまってモズのさけびはするどいのだろうかくらい多数もとびのなかをとびあふれる切り傷をなげすててものがたりのずらしもかくやとくるいのない大気をくるりさせた
12 きれいなひとのまえをすぎゆくそれだけでこちらもきれいになるしんくろするわずかなさみしさまことではちぎらないとおもいつついちゑがいちゑのなかみをゆらす
11 みぞれがかわきかるくなるあいだ否むひとみが蕾のようにみえること白のみのしじまにておもいだしたあなたが浪うつ木と木をぬけてゆきうしろすがたも焼け跡となること
10 あきらめたほうがうまく話せる枯葉のようにかるくかなしくかおを尻尾にかえてゆらすのだやがて犬のまえのつねとしてみえなくなる夕陽だと語り薄明のあぶらへと去ってゆく
9 えんぽうのわずかあかるんでいる空の底をみあげるような冒涜をなぜ女性的なものへおこなうのか視に牽かれるままくずれてゆく音とつうじる絮がはなれるのみできえごとのやわらかさものみなみてはならぬ施術中にあるだろう
8 きれいな星置からきれいな銭函へとなまえの海岸線をたどってみたい分布をおさえれば層までひびきだすおびの鍵盤にゆくおもいがあふれここから星の有明、その音もふめる
7 しずかなしぐさをしてならびあいそれぞれがたがいの反復であるときひとを林の音楽がとおく奏でる木管にこめられているかたちの奏鳴かおにあるいきた穴をつうじてもからだにある恥の穴をはためかせてもさみしい頭蓋がおなじ頭蓋とならぶ
6 男女の交媾と馬群の黄金の疾走をくらく二重露光した動画をみたどこかへゆくことそれはあらかじめひとの双対のくみあわせにうまれゆれる四肢じたいが遊牧されている
5 はなれる者らはそれぞれが天秤皿となって夜の虚空のどこかで支点を賭に付すのだ均衡はその支点により張られみなぎりかえってたがいの皿をけしてしまう星間が星よりも可視的なまちのさみしさはるか坂のうえへあるかなきかをみきわめおちるように街路樹
札幌在住、嵩〔だけ〕文彦さんから、信じられないプレゼントをいただいた。往年の嵩さんの詩画集『明日の王』(一九八二、NDA画廊、片山健版画)に、草森紳一が解説を付したかたちの新刊『「明日の王」詩と詩論』(未知谷)が送られてきたのだった。嵩『
4 あたえた事物はもうおぼえていないが上澄みにあったひかりのくぐもりならば こんなぼろめくからだにのこっていてひっきょうそれもわたしの衣服といえた くらいまくらべで埃まみれのらんぷが あたえたひとのようにともることがあり自体がいくつか忘却
季刊「びーぐる」38号(特集=追悼・藤富保男)、その詩書時評に、敬愛する倉田比羽子さんが、ぼくの詩集『橋が言う』について書いてくださった。思索の分光器により内容が乱反射するような幻惑的な書法。そこにあるふくみをどうとらえるかで、集中をしい