123 やがてばらばらにわかれゆくときのひとらのうごきのかがやきとはなにかそれはかつてあったアゴラでおこり四囲のひろがりが幾輪にもなってまらるめのながめで水紋がおさまるはちすひとつのめぐりだとかたられた
121 あれこれ歩行補助具をゆめみるようになりどの地上がとおくうつされたそらなのか足なえたちがたくまれた錫のなにかをおし錫鳴きして円屋根を二重のさまでわたるなつとひとのそこにさかさのけはいあってめまいのなかをつかれがきらきらあるく
120 こどもが球形をかんじるはじめがちかづく母親のめだまだろうがみずからみちるあじさい玉ならばあおい盲目のあふれなのだったすべて剪られ転がるさまにであいみるばちあたりで痴れ者になりつつ棄教のあたらしさをもふるえ聴く
119 どこをさまよっても丈ひくい草の花ばかり木の花のない北十八条あたりはさびしいらいらっくを誇る心はさるすべりをうえず紫微とよばれるべきひろがりがかなしむ戸口からなつかしい官女のあらわれぬ朝に路上の長椅子は草花のふたりをひきこみ椅子のさま
118 夕日負いおのが影まですくいつつくらうことなどできたのちはゆくしかないこの黄泉のふくろへゆうがおの坂もみたしいれた旅装にてとおす、とおのれ恃んで
117 だれかと家電話で語らっていたむかしは遠浅へおきさられた気がしたものだ凪ぎつづきの責めでふいにしろくなりひとを不如意棒のまま堰くしかなかった
116 ひとのからだなど分割できないができそうになるもとに曲線がからみかたちの内省とみえてうつくしいそれはあなたではなくたとえば時でとおさとおもえるへだてもあっておわらぬなかばはつながりにきえる
115 せなかだけみてそのものとわかるほどこべつはふぜいにふかくしみこんで場でみわけるやなぎとひとはちがうがいちど僧帽筋の語をおもいだすとだれでもない帽子のせなかもうごいて前をさりゆくふわふわが天金となる
今日、永田耕衣のことをちょっと書いて、ふとおもいだしたのが、さきごろTV放映され録画でみた西谷弘監督の映画『昼顔』。クライマックス、北野先生(斎藤工)に死なれ(実際はまだ籍を抜けなかった嫉妬深い妻=伊藤歩に殺された恰好)、絶望のきわみにあ
こないだの道新の土曜夕刊、ぼくの連載コラムが載った。四方田犬彦さんが中心になって編んだ筑摩書房の「1968」シリーズ、1『文化』、2『文学』、3『漫画』の全巻終結を見据えた、紹介と論評。おおまかに1はジャンル別に論者が解説をおこなう体裁だが、
114 ピンクにぬられた家屋から数歩出たときぬまのようにしめった声の複数がぼくらだ音の知恵はみしらぬ生にあふれているとジェイム・ロビーがつれそってかたるので弱気と謙抑によりむくわれぬこともあるくびられゆくうたがあわれだといらえした
113 レダが白鳥につつまれたときはなにが侵入しているのかわからずしろとやわらかさと厭な臭いであたまが身とわかれるようおぼえかえって増殖をよろこんだがそのいじましさこそめでられた
112 面積なかばに貶められているとおもえするどいかたちゆえかなつもみあたらぬ三角形とはおそらくすがたですらなくゆめのゆめなるをいなむ抹消因子だろうものごとのきらきらする未然のような
111 たいくつのさまがほおづえよりねころがりへとかわってゆきかたゐのおびる心身かんけいもドーナツから棒にふかまっているがふとしもながさすらあけはなれてもはやひとやかなたが打てない
110 やがて樹木がおのれをみおろすとかざあしもないのにこもれびがゆれけむりもあくがれいづるようだがまがごとのなかなど恋に似るのみだ
109 ひとがくるしみ柱を背負うのもそのかんけいがひと柱だからけはいまでたてられようとしてファサードがみえるんだベイビイみせあうとはそんなむかいかたひとみの奥もたてものになることからだと柱だけで部屋はできる
108 きえない紋中紋がむねにしかもふたつまでありつづけ余韻もただようからなのかおんがくだけにあるあいだがかぎりのこととしるされけれど中途すべてはひらく * 大木潤子さんの新詩集『私の知らない歌』は、五百頁になんなんとする大著といっけん捉え
【黒沢清と前川裕】 わけあって、前川裕のミステリ巨篇『クリーピー』をいまごろ読んだ。いわずとしれた黒沢清の映画『クリーピー』の原作。第15回日本ミステリー文学大賞新人賞を受けているとおり、これはたいした傑作だった。 黒沢清は原作から三分の一
107 瀧として龍はむごく吊られひとときとしておなじでないさだまらぬからだをゆがめしぶきをくわえたみずからでいぐるしくもありつづけた
106 このオオカミが牝だと気づいたことはかんがえられないおぞけをまねいたオオカミすべて牡でまっとうされるのに時のウロボロスはべつの同音をかなであと脚のあいだに扁桃がきずついていた
105 そのかみのほおづえのつきかたなどぼうようとしておぼえておらずうでとかたと顔でつくりどりしたかんがえのすりぬける楕円ひらいてたまさかおなじかまえをなしてもおもかげへのエポケーはふるえかがみのうらにてかささぎが鳴く
104 いよいよやなぎがしだれてじめんを掻きそめるなつそのかすれたおとでめざめたさみしいぞ他力がゆれをふたえする柳枝さながらのかなたまかせがいたいぞ