【侍】 こしかたをひとひろがりとはとらえられずおもいおこしがおもいでにかわるそのさかいめをうっとりみつめているひとがひとではなくなるあやしみにもとのかたちがあってひとのきものはいつかは城址に似うみぼやけてしまうわたるべき河のめもりをいな
【谿】 ふいにはげしくからだを屈したところ背後のそらがさけたそんなふうにみだれるひとが丘にいてああ同期しているからだのなかのおとをひかりにしているとそのしろさがそううかがえたおととひかりのむすぼれはからだをとおくほりこみふかみのある谿と
【坐】 おそろしい患部によってからだのすこしがかぎられるそんなことがすでにやまいではないだろうかぬくもりつつあるきせつではからだのなかに椅子をおきからだひとつをすわらせながらながめるひかりすべてを地のわずらいとかんがえてみるちりはじめた
【倶】 きれいなおんなとともにいれば「ともに」がやなぎになるたかさをながさとしてゆれてのぼるくうきをすいあげるそれでも蒸発好きの眼はかたちのくずれをみとめたそうだったいつのまにかこのむやなぎも剪られていてあるときはゆれやまない糸から糸へ
【草】 てつがくをやまと詞にあらわしかえれば詩になってしまうのがにほんごという草だこころの世にあるひびきがかんがえよりさきだちまどおさのくずれるさまがいつもまぼろしのながめさくらもえだではなくそらにこそしろくあふれひとごみにはいない女身
【浴】 いちじちがいがすきだから屋上を浴場となしてまはだかのわたしらは屋根の傾斜でゆあみしたすべらんようにというかたりあいがきらめいてせっけん玉をはじきながらあらいあうからだを倍化した陽と風のなかでうごくみあげられるみだらにはみだらなり
【穴】 よみかえしてみると日記のうるむところではそのおくそこに水のようなものがはしりふじいろがもれているだれかのいた棚だろうかおぼえのないひとのおぼえのない手あしがふるびてもきらきら反るときそれがしきさいにながれるのはかたちがずれてにじ
【告知】1)本日(四月二十五日土曜)、シアターキノで14時05分からイニャリトゥ監督『バードマン』の上映がありますが、上映後、30分ほどぼくが講演をします。『バードマン』にからめて、題目は「映画を観ることについて」。いらしていただければ幸いです
【桶】 儲、という字のへんとつくりがきらいで風をはった桶でへやをいっぱいにしたなりわいはおけ屋しごと場のけしきはかたちばかりで奇怪だたてやよこや円のいつでも途中がみえてしゃみせんが入用になりめのないひとがふえねことねずみがやかましくたが
【琴】 ゆみのなかよりあらわれたいきさつからたてごとはみずからの奥をひらく楽器のおかれるところはもともと淡黄にかすみひとのいるよりさみしいがはられた弦とすきまがボディとしかみえないそれはうしろをすかすひかえめであやうく遠方へさだまりゆみ
【鱒】 ゆっくりすんでゆくひとになりゆあみするみずとおなじくみたてにからだがかわってそのながれるなにかであいてのよぎりをつつむとゆっくりすんでゆくあいてにもなりまざることへのさかいがさかいのあるままにじみをますかのようだ性か精かのもんだ
【百】 くもる日、照る日とまどからかぞえるしきそのないことがとうめいにならずしろくひかってしまうはなのほうそくがたつときのとおくをましろにひやしていたはなびらのはがねがおととともにちりやがてこだちへのこるやわらかい胚珠がひゃくのかずでと
【燻】 さいごの薪をくべるそらの釜へなげこんだずっとかまえを炎やしてついにくずれたとき天人がたばこをふかすうすあおいけむりを円のでぐちにあたえるかわけばくべられるかたちの木材性にゆめのもようがありとおく人界が燻る枝であることおおくかつて
【藤】 せかいときそうながさで土ふかい穴の奥へまでしずかな淡紫でたれている藤のはなぶさをみたいたれることが重力にとりなにかしらの和解だとしてそれらはほそいむすめのたたずまいであるほかそらをちぶさのゆくまぼろしもつたえるだろうおちてゆくそ
【藪】 くさ木にひとをおもうのはくるいのきざしだろうがふきだした花の芽にはやはりあかごのこぶしをひそかにみてしまういずれそれらはひらいてくうをつかもうとするだろうそれでもつかみきれぬままいつしか風にくだかれるいまからでもねこのような芯の
【紋】 やなぎがめぶきだして丈たかく陰気なうすみどりがひかりをのみこみつつゆれそのまえにも芽吹きはじめた春紅葉があかく喘いでいたあるきではうすい寸断があるくごと身のめぐりにつづきせかいの左右もスライスされきらきら食べられるかのようだしず
【アレハンドロ・G・イニャリトゥ監督『バードマン』】 1ショット映画(カット連接の一切ないとみえるもの)となれば、まず想定するのがヒッチコックの『ロープ』だろう。この映画、ヒッチ作品としては評判がわるかった。理に落ち、知を誇るシニカルな全体
【馬】 くびをふかくたらしてなけなしの草をはむうまのわびたすがたにおんじきのとがをおぼえたひと日をくらいつくすおのれのらちがゆめすべてへることのない反世界のただなかにうすい馬身がゆれているかげろうのへだてをいきている点在どもはことばをな
【雁】 この世のおとを譜に採ればじかんがみわたせるのだから曲のひとの眼もおのずからするどさの鳥にちかづくみみがあたまを空へゆかすつばさとおもえばあわれかりがねは鍵上にひろがりとおいかげをつなげるその帰行にかんじるのはすべてのおとが世のそ
【鞣】 肌であるには反映が要るたちかたのうすいひとらが手にもつひかりを交換するときずっとたかいななめの場からきらきらなめされるていでたがいのあわいてもちにうまのうすいはだがとおるみみをすませばこの世あの世とはやがけしてゆくものがあるあぶ
【ディオールと私〜デザインの梅干】 本日の北海道新聞夕刊に当方の月イチ連載「サブカルの海を泳ぐ」の第13回が掲載されています。 今回扱ったのは、五月から札幌を皮切りにロードショー公開されるフレデリック・チェン監督のドキュメンタリー『ディオー
【束】 たばであることにかたちの謝意があるふくすうをまとめさしだすにやりよくしかもそれが顔をかくすのだからみずからもあいまいな数本にかわるのだひとつかのたむけはかるくつかまれてゆれのようなものをあいだへつたえるにぎるほうのゆびもつかのま
【隣】 あらゆるものにりんかくのないおぼつかなさをよろこんだのだからきっとゆめのほとりにいたのだはるかぜがゆるやかにながれればからだという陰阜もながれるひそかなる斜面とはそのようにみずからを中途にかえるさそいでそこに杭をたてることなどで
【蝋】 ひによこたわってやわらくなってゆくわたしをのぼりつめてゆくひかりのようなものがあるこすれからうまれだすからだぜんたいのながさはむしのそぞろゆく廊下でないならむしろ蝋化とよぶべきだろうつめがしんじゅいろにとけかいなふたつがこんせき