【御心】 夏服のポケットはうすよわいからかがよう箔すこしをあさくいれわたしのいない転瞬をゆめみるとみこころのおいでました当夜もつきひ貝のかのみぎひだりのよう
【日傘】 いっせいに谿そこへ日傘をなげすてるゆっくりとした抛物線と回転の花がわたしらのたかみをただ中途からしろくうすく、ささえおよぶように
【夕狩】 わかきのようにあかくあがめきたのにてのひらが夏ながら霜を置きだすとやがてはすくなさをひこうとした死もあかうせん、そのなみざかりなぜ悼みするおりおのれまでいたむのは
【員外】 ひと日ごとのととのった枡目にむきのちがう自分を置いてゆくとわたしはうきしずむ水禽のようけれど枡目がみなもにのみ浮くときづいてはみぶるいしてしまうあおぶくれた員外も映りあう日は
【あからむ】 手ではなくたおやかな骨をさしいれてはさしぐむようにひとのふかみをつかみおもうとおなじ晶相にわたしもきえてもののふくむふたつがあからむ
【例外】 あるくたびしきいをふみわたってこれが例外だとあやめをとおるまどおゆえに一列も列でなくはなれてゆく、が潰れていった瞑り目のやりかたを千かぞえればうしろ髪ひかれこころひとつがみたことの例外をわずかさだめる
【符について】 おんがくが減っていってきえたこの世さいごの余韻にくらべたらへだてて散るひとらはまだしもからだの音符をとおく立てあって最弱のとどきゆくはるか理のさなか
【夜雨】 たびたびの夜にきよめられ寝台が銀の粉できらめくねむりではふたつのまどべへそれぞれ寝台がはなれてからだをゆめにけずられる