【内側】 紙ふうせんがふくらむときのあのくちびるのあまいかゆさをおもいでにすまうひとらからくちうつしにうけとって ことばへかえて売りさばいた点のようなものを商っていたのだまたは湯とかにじみとか翳りとかを なじまないみちがまがってのこるま
【留守】 しょせんからだはしおつぼだがうごめくのがげんわくのもとこぼしたものがひかってみえる じぶんのいないときをたずねるとへやでなく塩田という気がした にしのまどべにまねきいれたひだまりがひだまりへかさなって棚ではなく階段という気もし
【両岸】 川はばのようなひとをくみしいたみずからのあわせにちかかったみずからの川だけながれてひとをみずとはもういえなかった 火でない魚などおよがないのだろうそれこそがてんごくの夏の川だひとはだのうえ、いくつかをみた こっけいは金魚すくい
【姉妹】 名のようにじゅんすいな姉妹がいるたかこ、ながこのふたりだった えだぶりのゆたかなけやきがしずかにゆれる庇護下へおさまり樹高とのちがいをそえていた せたけのならぶ一角がただ澄んだからだぶん、という物かぎりでこのしたやみがふかしぎ
【椅子】 椅子は坐るからだを模している背もたれは背、ひじかけは腕座面は腰、脚がせつなくも脚だった けれどいくら眼を凝らしてもあたまがないからぜんたいはうすくいすある先ざきが庭だったのみアーチをくぐっていたころだ 椅子をつぎつぎにたおしむ
【開閉】 どこまでがかおかわからぬが顔にふるびた鋭角をたてあいさなくなったことのあまりをほつりほつり開閉させる みずのなかながれるけむりをかつてすなどった、かつて掬った砂嘴にもどせとうれいながら かすかなる芹の匂ひすとはくちばしでないは
【夕水】 自転車でゆくすがたも移動そのもののひかる裸形覆いなくさらされていて しるゔぁーくらりもんどはまちをかすめ、からだがうすい さどるにすわっているのにふるめかしい立位となりあきつのようにながれては夕水をまわしているのだ おと
【藤棚】 ゆうかん地をあてなくさぐってふと藤棚衆はしずかに足をとめる それからみなで天板をくみたて空間とは天からおりてくる埒だとひげづらを虹にしてわらいあう 苗を植え秋ごとに蔓葉を剪りにくるよ車輪となってしねるようじゃないかけれど稲をお