【膝】 きれいにないているひとへにあうことばをそえてゆくとみずよりもつちのようなものがあしもとのあるゆかをおおい身をみのうえにしてしまうなみだいがいのどこかが足りやがてはひとつめのそこふたつめのそこ、というのかときのまにふしもあらわれ竹
「女であること」はいま「こじれやすい」。結果、男が「女になること」もふくざつな脱臼をしいられてゆく。たぶんそれが現在的な抒情、身体性のひとつ。まあ、そんなことをおもいながら、今月の「現代詩手帖」での連載月評を書きました。対象とした詩集は、
【出船】 ひろがってゆく不幸というおもいは出船へのひとつのながめでもえられたとおざかるものがおおきくなるのはそもそも時間がたわんでいるためそこへおおくのわかれが接がれだすとおもいのみならずあいいろの菌もゆれたなみなみとみちるおくゆきの稜
【二重らせん】 とある絵ではおまけとして他家の糸状藻がかかげられているそうしてもつひだりてからおぼえずくらいうごきのうまれだすこともあるのだゆっくりとらせんを藻がなせばちかづけない、がちかづきだしてなにかしら穴のようにふかまる絵を背にし
【六時ごろ】 しずかにそれを了えたわたしがそれのようになっているというのがまことある式におこることではないかちゅうごくの都邑のちらばりをいいきみたちの世界大の流離をいいかたりむけた若々しさのあかるみをみずからをまげのぞきこんだときわたし
【宅配】 有の有るものは有つことであって在の在るものとはちがうわたしは枯れ枝のひろがるさみしい家のまえにたちすむひとのけはいをみずからのほねぐみへとしずかにうつしおえるひとりであり一家だろうやがてなら一帯だろうたずねて郵便夫となってその
【水の手袋】 ひかるてぶくろとしてよむ本のまわりがひろがりめくるゆびがそのなかへしずかにつつまれるのならみずのようなつながりこそがあかずによまれているのだ
【帆】 あかねさすさむいおきぬけの朝にその日いちばんかんがえるならいはからだを帆走へゆだねるに似るうしろの自分がまえのじぶんを追うそのながめになみらしきものがはいりとおいうしろすがたが十字もてかがやきゆれるのをいぶかしむが一日ののこりに
【幌平橋】 たりないもののひとつがさむさや水にうく木片だとするとみおろすことはいがいにきよらかだばんしょうはどこかへというあわいかたむきをふくみそれじしんをとけてゆくので月日に似るゆめがたくさんあるあふれるならびのなみだはよわくてかたり
【光陰】 愛にかかわるなにごとも不可逆に循環する似たうごきが波となってくりかえされるときうごきそのものがほどけ、またむすばれるふたつのあいだには錠のようなつなぎがありそんざいをこえた寓意とそれをよんでみるじぶんらでない鍵穴と鍵がふかみで
【垣根】 とつぜんわたしがすくなくなりひとのふぜいにかためられているそんなとおさへいることがある坂のとちゅうに腰をおろしてくだもののようなあついひとみでかぜのあらわれるかたをみやりかみをうしろへながしているあれがなにかの待機だとすればわ
北海道新聞本日夕刊の連載「サブカルの海泳ぐ」では、映画とTVドラマの混淆する場所を考察しています。具体的には正月に放送されたドラマ――『女性作家ミステリーズ』『夏目家どろぼう綺談』、それに去年11月に放送された『世にも奇妙な物語・映画監督
【からまつ】 あいしあうものらがとおく五、六人ならべばそのながめがひかりのかいだんへかわるけれどもひびくうたが階なのか律なのかぎもんがからまってだからシンコペをなすよわいひとりへこそまなざしする気散じがうまれゆっくりと森もバク転する
【鳥黐】 きらきらとかがやくのではなくこの世をただ褪せさせるようにしかひひのゆき、ひびのゆきはふらずさみしく明度の差こそ柔和してゆくひとのかたちもすがたになってひとちがいのまざるのがうるわしい冒頭一行はなくなくなくとこだましておんなたち
【入口】 そらによみがえるあかねがひとのさったようにうつくしいことがあるそれでもべつのじぶんがのこったところへたちのこったところへまねきあめつちのふかいうつろをまねのできるものへとおだやかにならしてゆくだから座標をおぼえるのも身のおきか
【酢】 ひかりと酢のどちらにも浄化力のあるところがそれじたいでないゆえに場のあれごりーだとおもうそこにくすんだこがねのあじさいのかわいた残骸がひたすら球のままに群れつづくかたちもおわらないつめたい酢のふっとうはふぉとんの音階に沿いもちば
【明暗】 からだがひとつのいさおしだったことをひとつの老いはたちすくみおもいだすだろうみおろせるたかみをことさらにえらびだしみおろしたたいらとからだがおなじだったといまや浮遊になったじぶんがふりかえるだろう嵌絵のなかにいた日々には関係が