【妍】 うすく切ったサケ肉をこおらせるだけの料りかたこのるいべではなにをたべているのだろうしゅいろそのものをあじわい肉が室温にとけるまえのふうがわりな抽象をよろこびぐずつきと氷のかんけいやふった塩のうまみにもしびれるあかいあぶらのしゃー
【皿】 つれあいがあがなった皿のうちとりわけてすきないくつかがあるさんま皿がそのひっとうだがこないだの小皿も良い載せをするそこへ木の実などをひろげるとたちまち獺祭となるのだからかりずまいのかまえそのものもにすがたで食すことができる思想の
【絲】 ふるいおんなであればしろくとどまるこの時節はゆふいくへにも身をつつんですがたがころもめくだろうはだかのそとがわをまくおうなの布のてざわりそれがくうきとふれあってながめなど手もてつかめるとおもりまでかなしみにするじゅばんごとのすき
【韻】 ごまんとあるというときその字は五万でないらしいそらをまるまるおおう花火のようなものがかぞえられる火の個々をよこへながしうごいてゆくそんな数のきえる臨界をごまんとよぶのかもしれないかぞえられる詩をおもえば一瞬をゆびさせない詩などは
【息】 あたたかいきょうはゆきが液化をとおりこしくうきをあげだすのがとおくみえるだろう翔ぶひとのいくらかがいでるかもしれないまちが路肩だった日はひといきに縦横をむかえそらへみちをあふれさせるはかりがたいすべてがとおい内外をなしてひととき
ぼくが顧問をつとめる北大短歌会発行、こんどの「北大短歌」(第3号)は「性愛短歌」の特集だ。万葉から現代まで編集部が苦心して作成した「性愛短歌」のアンソロジーを誌面掲載にさきがけてメールしてもらったが、性愛テーマの口語短歌の「開放性」に食指
【段】 わたしのおんなには仮定というものがなかったあるきながら死物をちらしてゆくだけでない月明のさしこむ段があればそこにひかりの巣のあるかぎりもう天心の月が起源ではないそのようにそらんじてさえいたうたではうたいかたがむろん刻々の仮定にな
【ティム・バートン監督『ビッグ・アイズ』】 冒頭タイトル部分、接写からすこしはなれた関係図へ、という経緯で、印刷機が印刷をおえたカラーの絵画を一枚一枚吐きだしてゆくようすが映される。絵画は巨きな眼をした子供の顔の存在を、感傷的にかたどっ
【双】 おわりちかいぺえじをめくるとさらなる連続なのかそれともそれでしまいの対なのかふたつのものがあらわれるのにともあれおどろきをおぼえるそうして繙読と生が似てなまこをつらねた本の急場なまりの底の左右づつにふかしぎな紐がたれている双であ
【鏡】 春めいたとおもうのはあやまりだろうかきょう一日は乞われてゆきのきえのこる丘まだらのつちのうえへこの世をふやすべくつぎからつぎへとささいな鏡板を置いたなしたもののあらかたはあおぞらをたたえる水たまりにもみえるがまばたきをしない鏡面
【塩】 ハーブ塩のようにそのものの塩はなにかとまざることで舌ののぞみとなるいしるでさえも塩を潮へとかえたいそべの験しなのだ蒸散せず晶となるしろさやうす茶こそわたしらのぜつぼうで舌がちいさな混色をよろこぶのにたいしてまなざしのなかでは純然
【復】 文字はからだで書くものだそれが性事のごくいだとシーツにちる文字がつたえるうごきは撥ねうごきは返しそれでもまるくおわることがひとをおさめもするだろう文字がはだへとこびりつけばせんとうでいっさいながすゆうがたのひかりそのものが湯のよ
【門】 紙背にそのまま穴をひらく門という字のさそいがみごとだないものをふくむ象形だからそれは紙上にさえのらずにおのれをちがうものとしている戸口までに植えこみがありやわらかくまがるみちがひとつの音楽的なながさだとあるくじぶんをおぼえてしま
【衣】 頭部のない首から腰だけのトルソはけして衣服を着ずにそれを吊るだけだおのずから斬首の記憶にまどろんでとびたった首がさいごに視たおのれをかたちぜんたいとしてさだめているそれゆえトルソの方向はまぢかへの俯瞰でこれが軸木で縦にささえられ
【三島有紀子監督『繕い裁つ人』】 図形的には、並列が静謐をつくりあげる。ならば時間的には、反復が静謐をつくりあげるだろう。劇伴音楽の記憶がないほど(それでエンドロールでの平井堅の、財津和夫のカバー「切手のないおくりもの」の歌唱に驚愕する
【棒】 たとえばとおくへのびるながさをこの詩の棒で倍化してはかるときにえられた倍数が喩となるというのではぎゃくに詩は厳密でなくなるだろうこの棒そのものがのびてとおくとむすびながさがながさでさえなくなる魔法がながさとみえたもののむしろ実質
【晶】 ひとがくるしむような詩篇となってそのあと黴をさかせることはあるごみをすてにいってごみにすてられくうはくがみずからになることもするひとつのおこないが了わらずにじぶんをくりかえしにかえるとき日にすきまありとおもうのみだったゆききがあ
【紐】 ふたてにわかれているみちを左右ずつ半身をべつべつにわけみられやしないかと動悸しながらそれぞれあゆみすすめてみたほんの土手の数十メートルかたほうには紐がとぐろしてもうかたほうに紐がういていたそれじしんにしか似ていない類似がとてもさ
【丹】 苦境にたちゆびをつめてしまうとみなぎるべきからだのせんたんから生気がぬけだしてとどのつまり十年殺しの懲らしめになるとわかいひとらにおしえてあげたせなかいちめんへ墨を彫れば五十をへずして肝硬変となってふとくみじかく死にゆくだけそん
【漿】 とつぜん家から風呂場がきえた湯浴みするおんなをけそうとするうちみずから家風呂がとけてしまったそれでぜんたいに欠けができてこれらが反響して髪の家となったかけ湯のくりかえしたぎるもの音がいまだに北側の紐をゆらしているけして階上へとみ
本日の北海道新聞夕刊5面に、ぼくの連載コラム「サブカルの海泳ぐ」の第11回が載っています。見出しは《ハウツードラマの傑作「太鼓持ちの達人」「〔俺の〕ダンディズム」「アラサーちゃん〔無修正〕》。そう、またもやサブカル色のつよいテレ東系深夜ドラ
昨日は札幌に来ていた三角みづ紀、それに山田航、久石ソナ、ぼくが合流し、すすきのと狸小路のあいだあたりにある、こじんまりしたジンギスカン屋さん「ポッケ」で呑んだ。いやあ旨かった。肉が塩ジンギスカンをはじめとしてやわらかく旨い。おまけに脂がす
【寂】 さっぽろの家屋はみな二重窓だからつよい風で換気扇の鳴るいがいはほとんどそとのおとがしないだろうましておんがくもきかなくなると血流音だけが詩づくりのもとを占めしずかにただころされてしまうはなとうとすることばを吸音するこのからだがも