【うしろから】 けしきはひとに正対などしていないそれらはうしろすがたのままだだからせまるときに愉悦となるし かどをまがればそのかどごとにあかるさがまされてゆくのだろう あせばんだうなじにおくれげがながれるかたちのままへばりついてひっきょ
【奥山大史監督『僕はイエス様が嫌い』】 無神論なりの敬虔、という宗教的主題がある。このテーマに子供の無表情が適合するのは、ロッセリーニの『ドイツ零年』でも思い当たるだろう。冬は雪深い僻地での小学校の木造校舎、紺のブレザーの小学生の制服
【おんなのかお】 おんなのかおがなぜおんなのかおにみえるのかそれをかんがえるのがすきだ まなざしの向きやまゆのかたちによるのかかおはあたたかいみなもだしそのひみつも草書もゆれる かおのまえでかおとしてちりぢりになっているものかがやきをあ
今泉力哉監督『愛がなんだ』の凄さをどう称えたらいいだろう。まず映画表現に必要なのが人物の行動と表情の精度だとして、そうした精度を身に帯びすぎる映画が無償性特有の虚しさで決然と輝くと言えばいいのか。ともあれ原作の角田光代の小説が、恋する人物
【阿部はりか監督『暁闇』】 ギターとコンピュータをつかい、風のような、波動のような、透明感あふれるプログレ・インプロヴィセーション音楽をつくり、自らのサイトに楽曲をアップしている少年・コウ。家庭に母親はなく、彼に弁当代を渡す失意の父親だけ
【ワーズ】 手ぐちがうすいのかいなほから金剛のつぶをそぎおとすまねができない まないたのうえにはとうめいにゆれるわたしの花あかりのような反映がありことばの庖丁がおどる からだはひとつの空中といえるかもしれない頭上に作り棚をこしらえおかれ
白石和彌監督の『凪待ち』、香取慎吾の新境地を拓いたことですでに傑作の誉れが高いが、白石監督の宿願が見えた気がした。彼は内田吐夢になりたいのだ。内田吐夢といえば主役を過酷な運命の偶然に置いて、魔=デーモンを描く主題の一貫性があるが、例えば『