【鏡人】 月光のしずかににあうひとがそこが野の里程標だというのかあしもとをくらい雪塵にしているちりしくのがくだりゆくこころだとあしうらをぼんやりうかばせてもいる微塵であることのうたに口ずさまれやがては佇つだけのとおさへさだまる
「現代詩手帖」のこの1月号より、一年間にわたる詩書月評の連載がはじまった。みなさんお手もとのこの号では、「音韻」に着目して、以下の詩集を論じた。稲川方人『形式は反動の階級に属している』、カニエ・ナハ『用意された食卓』、石田瑞穂『耳の笹舟』
【うちがわ】 ゆきふる日のおわりはいつもあいまいで日をうつりすむ遊客の宵のからだには中間色と好色がともどもしめってそのゆびが灰なるものをかきまぜたもくざいの芯のように生誕の恥はみえ偶合でさえかんぬきをとおすだけのことでぐちがとじられてひ
【接近】 これ以上の傍はないというところまでちかづけることをいきものへするとすきまじたいがただのくうかんなのにときがひかりをおびてくるようださしだしたてのひらのうえに綿の舞うしずかなおんがくを総身ではこびながらふれずあるいたのはゆきむし
【湯神】 せっけんのいまだよわき日はみずのみで身をきよめてきたのかしてみるといちばん湯にも湯いがいがかがやいていただろうあらうあらわれるまぼろしがゆぶねのただなか、きらをなしてりかえるそこは献身湯ともよび名されていたのじゃないか
【薄刃】 ついにおもい荷をおわないかすかにも破線のあらわれるふさわしいせなかだとおもったそれゆえからだへみえかくれするどうぶつの部位を思想できるしまたがりをもらえればかるさからなみだを汲む桶もまたうごいた位置そのものを置くことはできるか
【均衡】 ここではおちるおとはしないしずかだとそこへしるせば詩がしずかになるわけでもないてにをは、などのかたみがことなりながら秤りあいするふるさの均衡をみあげるだけだ北に柿のみのりがないからなかぞらもひとつの無底となりすきま舞う雪のくろ
【襯衣の唄】 くちびるはねじるようにシャツをかみいっぱいつめこんだまましんでゆくあやうくなった息がやがておもむろにひとつきほどで切れるのがよいかげろうのぬまべで荷ぐるまを駐め馬とともにすきとおってゆくのもよいもう草ではなくしずくのみを口
【客分】 にんげんのつくるあかりはおよそまやかしでよなかの大通をあるいてもあたりなどまっくらだひかるものならにくたいでしかもそれらは幽明のさかいにあってのみ微光をはなちそのときはだがひだをのばすように狎れるゆきのはずれのひとを他者とよん
【ダム】 ふもとよりみあげるとダムが築城にみえてさみしい治山が治水になったいびつたくみがひらきあっておらずみずもおのれをながれていないうすいえぼしをかさねかぶるふるときのとおさならいいのに
【半分】 イヌであるはずかしさがそのひとみをうるませているときじっとみつめてやればよいたよりないいっぴきのうちに種族のはんぶんがひしめいていてみつめることはこちらあちらのわけめをためいきするに似るはんぶんのさかいをぬいながらいのちをこと
三角みづ紀さんが共同通信の詩集月評、その担当最終回で、ぼくの思潮社オンデマンド『束』をとりあげてくれた。きのうの北海道新聞夕刊で知った。内容引用のないのがいささか残念だが、10月の詩集刊行ラッシュからピックアップしてくれただけで感謝です。
【まがる】 ゆがんでいるものがいつもあかるいあいされるときしろくほそくあるおんなのそりみめいたとがりはぬけてゆく冬木の枝えだにもみえてああこの世はきえようとするせんたんであかるいまでにおのれをふやしているまっすぐな省略をゆがみはいなみな
【分銅】 さっぽろへくるときがらくたといっしょにふれっと音痴のぎたーをすててはきたがないぎたーをいまもつまびくことがあってはじきだす二音へと声をのせるうたいかたがつぎつぎにものごとをはかる天秤のようにときの蕩尽をゆるやかにおさめるのだは
本日の「北海道新聞」夕刊に、ぼくの連載「サブカルの海泳ぐ」が載ります。今回、串刺しにしたのは、又吉直樹『火花』、10月放映の「キングオブコント」、そして先ごろの「M−1グランプリ」。はい、今年のお笑い界の総括という気色でした。 コラムに書
【ロンド】 ゆきがいっときやんでそらがひらけわずかにも落葉の舞がよみがえったので日に透かされる落下それぞれの遅速を眼にとおいものとしてみつめあげていたまわりからはなれたひともとのいちょうはたしかになにかをつらぬかれていたんでおりあふれる
【声の鳥】 しずかにうきしずむ声をもっているしぐさをつかいホノカのまことをかくすその声は大小ではなく遠近をかえてこころのまなかではなくへりをつかむしみずのまぢかを上下してなみもかたどりするなにかの鋳型かとおもいまえから圧をかけるともんし
とうとう、ぼくの所属する北大、映像・表現文化論講座の機関誌「層」の8号が発売となりました。ぼくはそこに、90枚の長稿「『私の男』と結晶イメージ」を寄せています。2014年公開の熊切和嘉監督、二階堂ふみ、浅野忠信主演『私の男』に、ドゥルーズ『シネ
【べつのルドン】 あかるいほうへ、がまぶたのうらにみちるやっとした瞑目のふちのしずくとともにあるおもいがひとつの破船をかたちするふゆのまもみるめはまかれてひかりがこぼしたおとのようにあらなみからはこばれてくるみることのいきつぎのあいだで
【消界】 とおくゆくゆったりしたうごきがきんいろをはなちうつくしいのならうつりすべるかげにはその起点がつかまえられてならないだろう中途だけがあるとおもいきることがふれあわぬそらとかぜをたわませとおさのうちへときえる雅量をこがれいるときの
【朝湯】 じぶんがふたりになるときはそのかたほうがおもくはりかわききった流木をかかえるすがたのまんじなどあるものだあさぶろにいれば朝のなかへいて双のひととくゆうの科をするあらうなみとあらわれるいそべふたり以下ひとり以上のあわいでゆあみゆ
【雨世】 そらからはあめがたちかえりゆきがいきかえってぬれつくすおもうかおがやわらかくかたむきほとりのくさをみにゆくによいよわいまなざしの縦長な日だみわたせるかこいとおなじあめの筒のなかでかんがえるふるあめのゆるんだひろがりをくりかえす