【詩集】 ゆうがたにえらぶぬのにかくれたなまえをもどって、そのひとをよむ 行を追えばかわるときがありみえかくれするかおもいっときのあかしなきましたか、どうですか おのれではないものでうしろがみちていてみえるのはただ先頭のみ これまたうら
【遅愛】 やがてそらからのものであつみだらけとなり情さえうすくにごるのに ながめるともなくいてあらずともなくさらにいて とおくまでたどろうとしちいささのこのなかでみずからをかきいだくようあゆみをゆっくりさせる あいしかたをまなんだのだ速
【陸続】 あるきに枯葉がまといつきあしがなくなってゆく なにをもってみずからをふたえにするかでとおくのぞむまなこもある ふる、とつぶやくひとしなみに地表へおうごんがもられるのでこのよるもさかずきなのだろう べつのなにかは去ったわたしなら
【他生】 ふちのまるさにこのよのにわをさげめぐってゆく椀がある うまざけがきいろく透きゆめをゆれている まるさはひとの不足をいうだからこそのみくだしになみだのあじがするが天上もうつっている のどには他生をとおす面前ことごとくおぼつかず衆
【交換】 よながのけはいがねどこにまでふかいりし籠と似たひとはきぜつする うちがそとへおよびねすがたもたわむりんかくは流星をはなちいえぬちがてらされる 詩行ごとの陰陽のようにひとはつづいてゆくあるべくあまれたのだ しずくはもうないがこう
【翼琴】 翼琴はちいさな幅でおとに強弱をつけしかも響きに淫しない 家具にまぎれゆびづかいをひざにのせるここちだ つばさをひかえめにひろげ夕禽にもなってゆくがなることはたえず練習中みぎひだりがゆめみる うちの金具でこそみずからのうちをうつ
【水火】 水火、ふたつ性がまざりあぶなさがうかぶぬれてそこがただ炎える くるしみともされるがすがたにこそそれがみえかげろってはゆれるゆれてあるなしのさかい あいまいなとおさをほらあなのようにおぼえ ひとのひろがりのする迎え火がこわくなる
【海髪】 ゆめのなかではふつう風をみることがない事物はうちからとよみただ閉塞をみたす それでもあるときは手に風をもってくしけずるみだれをきわめようと ふきあげたものは線へだたりがひとにかよう ふかくひめられている寂光あまたにも泣き海髪へ
【非有】 晩夏のむこうへうかぶあきつとはことばだろうか みはるかすとおくにありあるかなたがしめされるがもうかたるべきではない 地の水をやしなおうとかちいろのつまにもなるけれど夕風よろしくそこからよそへゆくだけだ ひう、非有と尾をひいてう
【朝顔】 あさがお帰りをしたひらくことをあまた視てこのからだもみはった あおやむらさきがきれい天童のつかう小用器に似て つゆのときがしばしあるあさがおのゆくえおもうとつるこそが問となりあけぼのへきえかかる 世はみな露台だろうくさぐさのな
【遠近】 ほおづえはからだとすがたにぼんやりと遠近をつくるつくられた穴こそとおいのだ 星々たがいのへだたりがとおくあらわれるのとおなじほおづえもしぐさの配置でゆっくり箔がめぐる かんがえがじぶんとはどんな星座なのか 片頰からほどい
【拈華】 ひろがるちからが飽和してやっと鞠をなしているすこしひしゃげてもいてたたえるしずくがひらたい しろさがゆれるねむる斬首は花がたよりしたとあなべるがくちごもる こまかなすきまにおくがあるとすれば わずかにみどりなすがもう拈華が微笑
【安居】 日々の端居をつなげるうちほとりをうつりねむったいつのまにかまざっていた からだにあるふたつの縦ひとつはこれまでをくびる 斑のあるものになろうとして腑のあるさまにかわった未聞をあらわす語が百腑だ みずからに安居するとうしろすがた
【浜梨】 てくびに鈴をつけるとふれるけいいが旅程となるなにが鳴るのか問わないしろはまなしではなくじゅんばんともかたられる おぼれさせているのはわれとわが身のうすぎぬなきものとするためすがたまでくびろうとする しべあまた、身の数がゆびのま
【杜若】 かきつばたのおとをききにあさのみずべにゆく あさのこすれるのとちがう端のまくれるおとだからみんな服飾なのかもしれない 素数間のたてあながみるかぎりおそろしい撮ろうとかまえるとどんな位置でも成立する ならば成立していないのだおん
【湯女】 うすぎぬの湯女が髪をすいてくれ、わたしがへってゆくのをてつだう 洗われてほそくなりくろくなることもあるだろう ぬれるみちたりはわたしをはだのないひだにかえしずくすべてがおもたい かんがえてころされるのが架空の人物というものわた
【飴棒】 住むくにはみずのうえうすくておおむねひかるみずおもてのひろがる春のちからを足場にする 飴のにおいがおのれよりしてやるせないがむしろ形容詞すべてもあまいのだ 水上何センチの幅だけをふたえの水としてながれる あしさきがなぜかはじき
【鉄梃】 Lの型をつづきがらとするくきをすい、かみしめながらとことわなどとくちにしてみる ずがいこつのながい長頭人だ序詩たらんとさらにのびて くさやぶとみわけのないいろみのままうごいてゆくがてにをはにゆきつかぬもどかしさそまみちがかそけ
【後姿】 たがいの背後をみとおすようにひとときをかたりあったのは詩のうしろ姿がみたかったためだ 遅速をたがえてさりゆくことでへだたりへふたいろをつけるように ながめわたる山河のいくつかないみつのさだめなどもつたえよわみをさらしながらほほ
古澤健が監督する映画では、案件=「物語素」が過激に複数化し、ドラマ線が混濁するパターンがあるようだ。『いずれあなたが知る話』では、暗い引きこもり青年がアパートの隣室にいる美しい母娘(電気を停められるなど深甚な生活苦にある)にたいしストーカ
【古澤健監督『見たものの記録』】 「自主映画」では原理的な撮り方がなされる。結果、映画の通常原理が覆されることもある。観客のアイデンティティが深甚にゆらぐ。こういう条件の映画こそ傑作とよぶべきであって、5/12—6/2、下北沢トリウッドのイベ
【軒廊】 へやよりろうかがすきだったをさなかたゐのころおもいだすものごとのあいだにみせられおとなをつなぐ軒廊にもかくれた ついにいりあいへまつろわず帽ではなくいばらをかぶるくさきのはてだとなのりつつ それゆえねむりながらも媾ったひとに酔
【竪琴】 あのたてごとのうちがわうちがわはすけてみえるとあなたはとわれずにかたった 分布それじたいではなくてなにものかのまえみごろとなりあれはひそかにもぬれているがくじんのひざへおかれるべく はるの音更をながれるはるとそとのよをつまびい
【旅居】 背嚢をおろすひとしきりつばさまでもがもげてゆくさだめしぐさがむごたらしい 荷はいつもみあげる連星と身をこめてしんじてきたのに 網膜にくろいミモザがゆれかくしがはじまってゆく二をことほいでいたことと荷とつばさの対も似ない 最低限
【五項】 置く掬う返すといったてのひらのうごきの系列であえなく片恋をてらす ひらいてあらわすおりにはからだのうすやみだがつづくうち初夏すらねがうそとがわとなってしまう はなれてさすっているのももののひめる傍流部分だった萼の色うつりをこの
【橋門】 門をあけて橋をわたらせるふうけいのもくろみらしいが門番ならもういなかった すでに水飴のねばりはのんだ交響は中途でこそにじんでくる三千世界、いっせいにこぼれかげろうがのぼりゆらぐ さかいをふたえにするのがあの橋門のやくわりだが木
【頰杖】 ほおづえをつけば顔のよこへふるさの鳴るあなができて まどをとじているのに風もとおりかたちうるんでいたりするさわらごち、鰆東風ともらす うみのかげがほそくなってゆくきょうなどはかたうでの日肩をずらしつかれさせて消失で左右を
【仰臥】 仰臥クラブにくわわった天井は月日の縞をなしている たかさを他にこそあたえることみひとつのしめるばしょも奈落をふさぐ蓋でかまわない 島そのものとおなじはばで川が島をつらぬいている岸などないのにそうわかりみずがたいらになっていった
【在野】 杖をつき、のはらへひとりゆきひろった茎をストローにして吹く 杖からストローまでのすすみにささえがくうきへかわる機がありえぽけなどわたしにうすい はなばなをふいたじつげつはわすれはてたらんるにすぎない二音あればおんがく、やがて二