「現代詩手帖」年鑑号は、居住地が北海道なので届くのが遅く、昨日、郵便屋さんからうけとった。自分の原稿にかんしては「詩書展望2016」という副題がつくのは知っていたが、年度回顧をおこなわず、詩集刊行ラッシュとなった9月10月分の「月評」とい
【一軒家】 まどはたてもののかおをつくるがそのいえはねむっているようにみえたゆうがたのまどのなかへ象嵌されてわたしはわずかにながれることですむひとともども紙くずとかわったなんのよくあつもない分身だからのぞきこむエゾシカもそこへ映ったなあ
【ころな】 ころなとはぐうはつの所与だとおもうゆきでしきさいがきえたとおくにうんでかたちのふちがひかるからだをまえにこころもしろくろにぬりわけられるずれるさきのないズレをえるべくこきざみがゆれるさすりのえごいずむだきあげにピエタをもとめ
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【手芸】 世には手芸というけんいきがありうっとりとみずからをとおくおもうあたまでなく手さきがおこなってすい、はく息のへってゆくときのまかたちとくりかえしがあらわれるりりあんをあやつる手のしずかからちいさいかがやきが身につたうとあみだすさ
【油膜】 円に内角の和というものがあればそれもむげんということなのかふしてひざをだくおんなのすがたの休みのおおさにふれたつもりだったが他界から虹をみおろしているのかみずたまりをよけてあるいてきたのかわからないゆまくのうごきもあっておいる
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【お知らせ】 12月2日(金)19時〜、赤坂ミッド・タウン7Fの「d−labo」(dラボ)で、樋口良澄さん、杉本真維子さんとともに、詩についての壇上鼎談をします。ぼくが東京の公衆のまえで喋るのは久しぶりです。題目は「詩はいま、どこにあるか
【椅】 かけてくれるしずかな腰をまちながらまつことは坐面をすこしもかえないそこにつぎつぎうつるひかりがみえてのざらしのままこしかけはひとつだ部位の名のあかるいほどのたりなさでちいさな換喩をつなぐあのかたちの系はふたつともに背凭れと脚がう
【捨身】 からだをきよく捨身といいかえながらちいさなものごとをひきいてゆくとれつをなしてながれたようになりわすれつつみえているなにもかもがめのさきのおもたさをいろいろかえた精いっぱいはじぶんではなく世界にありあふれるようすをつうじてはか
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本日の北海道新聞夕刊に、ぼくの連載コラム「サブカルの海、泳ぐ」が掲載されます。今回串刺しにしたのは、10月クール話題のTVドラマ(エンドロールで俳優たちが踊る「恋ダンス」もかわいいと評判の)『逃げるは恥だが役に立つ』(以下、「逃げ恥」)、
【恍惚】 らざろのはだにはよるだんの川がながれとおいひがしのざくろのようにさけていたなによりおわりとしてきつく匂ったくさりはてへこそよみがえりあれとはどこからくるひかりのみことのりだろうよみがえればおのれではないとおもいあしうらだけゆっ
【餐】 しんでからさらにじさつすればしんだことまでくつがえるそれでじさつをとりおいてきたゆどうふにしたしむ夜のかまえだしばし息をとめこころのなかがうすあおむかもさぐりだしたきれいだ、こいのようなものがふちどりをひかりでゆらした
【万華鏡くずれ】 えきたいのまま標本されたいうつくしいむすめはいるだろうしぐさのうるおいのなかであるかなきか見得がきられてじかんへのながめのおくゆきにいとのようなひかりをのこすしんめとりーがあやしくかしぎぜつぼうまでかくめいされる
詩誌「びーぐる」は定期購読しているが、北大図書館経由ではいってくるので入手できるのが遅い。その33号はこちらも特集が黒田喜夫。特集は未読だが、詩集時評で『石のくずれ』をとりあげてくれた藤田晴央さんの文章がとてもうれしかった。みじかいので
【そらのぞうもつ】 ゆきぞらをのしかかる脅威とするかそらのぞうもつとするかはひとしだいでわたしはとおい内部だとかんがえるねむたくこころもとなくみあげているとあわいぬのがいくほんかまいあがって消化のすすむはらわたすらみいだすけどみあげのう
【ひといきひととき】 およそ風はなにがふいているのかある領分がひといきでうつってゆくそのありさまがふいているとして九尾でのたうつからだに雪がまざるとえれきてるのはんもんがつたわりみずからをふるわせはがれだすのでうつむくあゆみも稜をうすく
【近況11月4日】 ご報告が遅れましたが、今号の「現代詩手帖」詩書月評では以下の詩集をあつかいました。 ・大木潤子『石の花』・神尾和寿『アオキ』・坂多瑩子『こんなもん』・林美佐子『発車メロディ』・萩野なつみ『遠葬』 「たりない詩」「みじか