片渕須直監督『この世界の片隅に』は、ことし最高のアニメ映画だ。のんの声優起用、その奇蹟的な成功により、作品の「口調」がふんわりふわふわしている。それと同様の「ふわふわ」はコトリンゴの音楽(声がのんに似ている)、パステル調ともいえる淡い色彩
【近況12月25日】 本日の朝日新聞の読書欄「売れてる本」コーナーに、韓国系アメリカ人ピーター・トライアス〔中原尚哉・訳〕の『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』をあつかったぼくの書評が載っています〔との由〕。実は札幌は積雪量96セン
ヤン・ウソク監督『弁護人』は、たんに社会正義を訴えかける熱烈ドラマではないだろう。チラシに引用される日本の著名弁護士たちのコメントは平板にすぎる。 主舞台は七〇年代末期から八〇年代初頭の釜山。高卒ながら司法試験に合格し、折からの不動産ブー
【翅】 さみしく放心しているこどもをみるとこころがはるかうばわれてしまうその子はかならず一角に身をおいてふうけいの折れをじぶんにたばねそのせいか放心にあるべき呼気のきだがくりかえす吸気へせばまってゆくのだまわりからのおもわれがめぐっても
【冬至】 このせかいのしずかな開眼がいちばんみじかい冬至ではこのせかいの法悦する薄目こそにつつまれなければならぬだろうならしていったのに最少がうまれからだがしんじつ哀しうなればお湯のゆずにすっぱくけずられてからだもまぶたをひらきとじた
【くずれて】 あと数分でしぬとさだまればあらわしにめだまえぐられほおをかじられてかまわないそうおもうのは身の持続がもはや玉条でなくなってくずれてもみたいためだが身はこころのなんなのだろうすがたみすらいまをうつさない
【雨たっぷり】 ぼくは朗誦に接するのは苦手で、歌を聴くのならだいすきだ。ボブ・ディランは朗誦と歌唱の中間、その可能性を、自分の歌詞=詩のために発掘する才能でありつづけたから、畢竟、ディランに耳をかたむけることは、朗誦から歌を積分することに
【ろすとろすと】 てばなしたものがとてもおおきければ手はその穴にすぽりはいってしまうゆきのうえとおくあるほしぞらへそうしつをえがきつづけるようみぶりをいれてまぜるうごきさえもきえたものと抹消者がともどもにあいだをかたちしてほりこみがふか
【くちよせ】 みこ「一音が次音をみちびくことをあさなゆうなほしいままにしてゆくとおんびんのようなものこそがそのかくれた単位となるのだからかんのんがかたるくちのなかよだれめいてかがやいていったきづかず意味をなしてたしかめれば舌のぎんいろも
【懸想】 てのひらをふるゆきへさしだしてもはだのぬくみで結晶はくずれるあいまいにゆきぞらをささえながらけれどてのひらこそがあきらめふかくうすじろい六角形にとがりゆくのだけそうをおびたそんなきかがくでまぶたをおおうしぐさのおわりみえなさが
【雪のイエス】 あなたはとおくふかくゆきをゆるしそのそうはくでくちをすすいだとうめいなほのおが顔からゆれるとからだのふゆがおもいでになったないからだのまま顔をよせてゆけばかなしくもあなたは対手にかわりしんくろとかんがえがほそくつながるゆ
【眼病】 たえまなくふるゆきのなかではくうきのふくむひかりがまずしくたいくつな催眠だけにかかるうえのゆきがしたのゆきにもたらすこもれびのようなものすらなくみあげるのがただおそろしいのだはいせつするそらの臀をかんじまなこへ乳酪がこごってく
【朝湯】 つましいひかりのみちびきなのかこの朝湯のはだかも柔和とおもえてながれるようなすがたにかまえた途端身を繃く縄がきえかかってしまうへることでおんなになってゆくんだおおゆきのとどこおるまちとおなじいあてなるかけらもろもろをながしてけ
【近況12月10日】 札幌はこの時期にしては記録的な豪雪で(積雪量60センチ!)、学生たちに買いに行って、とおねがいするのも酷だが、本日の北海道新聞夕刊に、ぼくの連載コラム「サブカルの海泳ぐ」が載っています。 三題噺で串刺しにしたのは、ボ
【目途】 しんだらこうなることにつきよぞらがあらかじめおこなったわずかながらにおってみたしおかのうえでもかなしくゆれたなにをいれるかしらないがひんすればふくろめくだろうなかみがそとみよりもみられてたましいだけをめどにされる
【よど】 すこしでもぐあいがわるくなるとからだはいたみ、おもくなってまどべへよせるのもはかなくたたみのまなかでよわさをまるめる恋の症状とは似ないにおう無粋でねむたくおくれるよどをたたえみぞのそこならちりぢりにしずむが両岸だけひとつにさせ
【通路】 まひるま通路はきみをあたえたとおりぬけてもゆけたのだみずのすきまへきえるようにわかいひとの店できらきらあのまどべがガラス器だったいつまで主語のないことを通路はささげつくすのだろういないのにうでがうごいていた