102 樹下想像の図と画題されればもう影ではない影がうかびおもえぬおもいはみだらづくゆうぐれビーストの斑のごとし回、ともみえて回をつたえる
送られてきた倉石信乃の第一詩集『使い』(思潮社、黒い光沢紙に指紋のついたようなカバーが、タイトルとあいまってとてもホラーだ)をさっそく読む。親炙してきた彼の写真評論からすると、とてもヘンな文体。ひさしぶりに文体の奇異な詩集を堪能したという
101 いっときに時間がはめこまれていてそのありさまがもうスタンツェだまなざしが失明を裏箔させるようにおとみな失聴の予感で薄ごおりしまぢかであればよりうつくしくなるやがて声には聴像の部屋割りもうまれくわけがましろにもえさかるだろう
100 百の橋をわたりゆくようなみずのながれるとおくがすきでひかりにはぎをいれずみされあの世この世と綾までうまれるひとまたひとのあやめのさまからみずひそむまなぞこふかくへとあらんかぎりの糸をまねいた
99 釦をとめるのは肌をかくすのではなくみもだえるからだをまとめるためでことなりにも倦みそめた詩のおまえは同異のあやうさから詩魔となるのだ
98 ソラをおもえばさらにとおいシドにこがれてしまう日はりんかくが水のみずからなすみおのようにもみだれはて茄子のうえへうつらなかった
97 すぎた日は俗耳をこめかみ下にたてここがふるい器官だとつたえるとみることのないあながあたまにありふるえだけをしろうとしているしそれもしろあやめのさだめとかえされひかりまとうくずれでなおも耳殻をわたがしのようにながすわたくし
95 べつのすがたかおになるのがいやであたまを天にうずめるのもいやででるときには帽子をかぶらなかったやまふじのころのかぜのかおりけれどおなじさにこだわりもなくこだちのなかでは髪へ羽根をつけてかわやでないことにうっとりした
94 とりかごをかなでるようにふとみえるたてごとはだきごこちがうまく添い瑞鳥ながれやまぬいくつものかなたにまどおくふかいなにものかをおいてないことのあいださえ糸竹でひからす
93 途中は恥しいので消滅後をみてくれふるびた始祖鳥にそうつげられて思いそのものをとおくおもいながらまなざしはそらの奈落をくだった
92 天へときえたロンドの跡地にはむすめらの靴がおおくのこり墓原さながらあれはてているがしろみがかりぼやけた雨足がおのれの幽玄を靴に容れてさみしくまわろうともしている
91 クセのようなものだが空咳をするとしきつめられた灰が林野をはねてする者と聴く者そんなふたりにふえはるかという域にさえいるのだと泉下がのみどをあかるく超えいでる
90 じさつするタイプのイヌかもしれないつかれとうれい、その度合がすぎてほとりにちかづくとはおそれがうまれ恐水もひとつの形而上学とわかるあめがふりだすとみんなあめのむこう
去年の北大文学研究科主催の、社会人に向けた全9回の公開講座「恋する人間」が、高校生にもわかる口語体講演原稿集として、一本になりました。鈴木幸人編『恋する人間』、北海道大学出版会、2600円+税。阿部は9人の演者のトップバッターとして、トッド・
89 したしさがまもられみまかったとはいえながらくあいさえしなかったのだからとむらわれるかたみの不通がいたくありまぐのりあとおく夜目の葉すべてもはんげつのなりにひっそりと咲いていた
88 はなれてさえいるルピナスときりたっぷをともにかたろうとするなら双方ではなくむしろ同時性のもつ肉のゆれというべきをあいだあいだのまことのとまどいとしてくちでしずませひからせなければならない
87 自転車がもしあたえられたならはしりながらする休息と夜にあおみがかる肺をおおきくさせすぎさるまちまちのさかいへところのほうぼうをひるがえしてまわることのすべてで泣かせる
86 うごきを停めているうつくしさが水晶にひそむとかんじることがあり槌で割りだすときに映画が起こるふたたびうごきだしたなにかはぬれよしんばことばでもかねごとだし人面牛身、くだんのばけものだった
85 三点をきめればまんなかを爆破できるそんな流儀で二兎をしとめてきたのだがいつの旅もかずの魔にたぶらかされるゆめごこちのそぞろあるきだったとひとつ三兎を世にあまらせてくるしむ
再来週水曜夜、社会人受講者にむけた公開講座にてゴダールの『女と男のいる舗道』を講ずる予定で、いまその準備をしている。60年代ゴダールはすでに山田宏一さんの『ゴダール、わがアンナ・カリーナ時代』や細川晋さんのDVDブックレット等により、その複