【耳朶】 そんざいがひとつの耳にみえたのはおとにとってなきたいことでした うすいジダ、とその名をよんで小骨や蝸牛などふくざつな共鳴のなかみをつねゆめみていて けれどもそんざいがゆくえなきあなのみちびきからはじまるのをどうして楽章ともおも
【横臥】 からだにあった縦が一切きえよこになってしまったのだからわたしじしんもきえていった しずかなかたちのこもりぬひとつ平椀のように水がうすくもられ あんいつへ風がふきこんでくるとしんけいしつにみぎわがゆれるさざなみがわらいじわなのは
【手題】 おもわず主題を手題と書きそんじわたしらはあやまりをしってしまう 海へとくだってゆく坂のようにわたしらは手においてこそしづくりがかたむいているのだ よこからみればどろぼうさながらおずおずと手題をさしいれつづきとおもうふかさをはか