【花眼】 晩年ってよびかけがおもいみえないものがみえてくると花眼にのぞみをかけられて からだそのもののまどをみましたふるやのつたの壁を背にしてかべがからだのかたちにひらきひとのむこうがのぞけました なんにもこわいことはないひとつあるのは
【福音】 福音のみでなりたつ詩をつむように屋上にゆめみる失明へむかっているのか ゆきふる屋上でとおくたつあのひとのむねのあたりときいろのりぼんがとうとうほどけてゆくのを裸視する もはらわたくし、とうずまくあれらみながけどおい福音 たより
【風紋】 あなたがさったのち残された座面にいくばくか砂の散っていたことはものものしい家財を震撼させた わたしらはものがたらぬためくうきへむかい気弱にかたるがうたがいをよんだあの身ひとつは顚末に似ておそろしくかんじた そらとおく砂が
【貫通】 つぶやきながらながめる癖がありゆきぞらをみあげていたおりもそらのころもとくちごもっていた 内外どちらともいいがたい層にほろびの錫がうすぐらくみちかずのおおさでこころがくちたひとをおそれるならただみあげればおともなく箔はみずから
【海雨】 もとはひとつひとつのつぶなのに万條のいとにみえるあの降雨がせつなく海をなかせているだろう えきたいがけぶるふゆのさわだちに傘のうちでこたえなければならず みなあのひとの累乗になりかわってかたみに海上をあるいてゆくのだ傘をさせる
【影絵】 れいじゅうてき、とこのくちが発しつめたさがあさぎりにひろがった 到来はすでにきらきらとみちていたみさきはきえることで海を抱いてみっつめのそんざいをおもった わたしは再帰によってわたしとなりしずかなおくれをみおろしていたうまやの
【隠顕】 じぶんにはおおげさにしないよすてみだからことばもほそくする 縦のものがはるかにみえる日がありそれでも塔がさほどたかくないとたかをくくり手許のならびをつくる 横のものがはるかにみえる日にはとおくが層になってことばがでない領域とは
【赤柴】 ゆうがたにもらわれてきて牝らしく、あかねとなづけたおさないころはもっとあかかった くさのはらをともにあるくとあしもとにほのおがゆれたなづけじたいがおどるとおもえはじめて詩のあらわれをかんじた 底からよわくわきあがりながらひくさ
【線虫】 モノには線などないという真理はみずからまわす腕をながめてわかる レオナルドも晩年は線の否定にいたりとことん明暗差を彫琢していっただからいま線が悔いとかかわりをもつ そらをゆくかぜが、ころものひだがそそぐ陽光すら線でしめされると
【水翅】 手からほのおをぬきかわいたみずをなでる あいしかたはそれだけでゆきつもどりつがかたらうしぐさとなった そらからの反映でものみなほのびかるひるまだからながれる川のほんの水面下でくらい水翅にふれたかったんだ 手がつめたく櫂にかわり
【党派】 党派がたったひとりであることもしっぱいする多数であることもともに顔の集合としてはうるわしい すまほがふるえ、すがたがかがみよわさにみなむすばれていった 森となってゆきかうひとさえとしよりでも生徒のなりをしてすねをきゃはんできゃ
【IH】 ゆがんだ同心円はうつくしいめのう、めらんこりぃの断面をせくすへなぞらえてゆめみる ほのおのなくなったすまいでもうれうどうしの同心がもとめられもう擦ることのないマッチのこんなてもとに玉髄がうかんだ すくなくほそくいきていればゆ
【飲水】 卓上ふかくコップのみずは詩さながらしずかにおかれるあなたがあふれようとしている まみずにこそわたしらはたえなければならない最少の連関で最少のよるをそれもゆびのつづきとなった なきながら黄金を呑むとわかさならうたいあげたろうがも
【並行】 あのひととは並行になっていてはなればなれにすすんでいるそんなときにそらのみえるものだ 旅に似た慮外がわくとすればおなじくふかい異風にいること ななかまどが赤の凝縮になるまでまなこがただ中動してゆくとさみしさにもよはくがひろがっ
【川神】 雨中風中にあえぐ橋をみたわたすおのれがわたられてしまうまことおののいてゆらいでいた すべての具象は沈下橋なのだだがなぜ木でつくられているのかしずんでやがて再誕するものがなぜみあげる木目をもつのか みちびきがつづくのみではなくま
【煉瓦】 このてのひらはおもいつめていなほのひろがりではなくだれかの割るレンガへとつづく とつおいつ秋にはつづくのだおとが破壊のさきぶれだったと おのれのあくがれがものをなぞりのこしてゆくたいせきを忌むかかわれば身にならうなにかがだれも
【繭蔵】 きぬをたべているひとがいるいとをすいつつ、まゆもほおばる手からくちへなめらかがうつる まとうべきもので内壁をおおってきもののようにくずれてゆく坐ひとをすこしほめるためには横死とくゆうのひらたさも要る そこからの漿などないのにく
【月齢】 ひとの途中がすきなので着替えるすがたにみいられるそれでもそんざいをけすようなぬののゆれる着物でなければ 粉塵をふくむ月光にまぎれ着替えはとおくおこなわれる秋のぬのがきらきらと舞う もちづきのもとのあれはだれ途中をちらす叛意もみ
【秋湯】 からだの秋が冬へとなりまさるそれをゆげのなかでかんじるためこの季節のふろに入りだした はだの悲は湯にひたされてしずんでゆくふかみでとろける ゆぶねはかんおけの予習だがおゆのなかだちもあるのだふろに入る理由はあまたありよさもぬく
【無双】 よい理由とはすでにひゆなのだと人死にのつたわる地でおもったてんまどからひかりがおりていた ずっとふたつというあらわれに身を割ってなげいていたころ そもふたりづれのあまたがものへのひゆよりもうつくしくあれは母娘、あれは姉妹とさい
【L字】 ひがわりでとうざい南北にまくらをおきかえるべくL字型のベッドも公案されたが ねごとすれば声が鉤に包まれしゅゆのうちにはかなくなった ねむりはすすきへとわけいりおきぬけなぞぎんいろに詩の舌がしばられてかたくものをいうとほねもにお
【著莪】 とうげをぬけようとしてこめつぶがぱらぱらとふりありがたく鉄鉢でうけた 凪ぐなのか薙ぐなのかみあげた仏すらわからず炊くやすらいへむかおうとつぎの谷におりていった 抹香の尾をほそく引くくだりのひとこまずつがつながらぬ連鎖のよう 身
【耳栓】 ないてきな音楽を脳の風へみたし耳栓びとはひとみをかすませるおもいでとはちがうものがみえる だれもがみみにふかく栓をしてなかに未知をみつけたといいますどろからわいて蓮がこぼれだすしらくもが段になったあのなかに ひろく水にうく蓮葉
【短化】 なすをやいてすりつぶすしおとオリーヴのあぶらで和えだしを張っためしにのせる 一日一油、枯れもせずとおあさをかきこんでいる くらいおえてまなこがあおむやいた網のもようがのこるやいばはくらしにつかわない くんでするあぐらのかたちい
【舟舟】 そのまま湯舟を木舟にしたててあしのばしてそらをみあげるおとめもすなるかわくだりは水図へひのきをわたすことだが はかなくひびく道道の畳語がしずかな舟舟になりかわりこの世はおとのもときえてゆく 消滅のそんなばしょにこそはだか身のの
【忘失】 羽に異なるで、なんで翼なのかそうおもって詩がうずいた まえあしふたつのきえかたはそのものが竜のとまどいやがては忘失がそらをゆきかう それでも山色のつばさでなくくちばしがおのれをはこぶもとめる忘失も木の実や虫でそこへいたるまでが
【曲率】 すべて曲率を思いにしまうのがさみしく、ひとの世だった しぐさをみやるさいにもそれはりんかくにゆらめきこまかくみえかくれして このひと月もぽぷらの絮の舞いすがたが曲率になりかわりうすいおもかげをかえしたまがりぐあいがひとかずだっ
【堂宇】 並走するあれら二頭のあいだも走っているの伝でゆくならぬらそうと掬った手のなかでみずもそれじたいをぬれている 聖なる歌にはこの二原理しかなくにくたいにのせたすがたさえ分離がひかりになっているのだ かばんではなく声帯をたずさえてひ
【馭者】 すすめてゆき、のこりではなくそれまでこそ減ってゆくとおぼえ浪費にうっとりすることがある ひとへこまかい地名をのせてひとをかんがえつくすときなど ぷらたなすほかをかぞえたがそれぞれのかどが固有をつげてみえることがもうぜいたくだっ