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日記一覧

 モンゴメリ「赤毛のアン」全編のモチーフは、マタイ伝「人はパンだけで生きるのではなく、神の口から出る一つ一つの言葉による」ではなかろうか。 最初に登場するのはリンド夫人であるが、物語は心臓の悪いマシュウがマリラと相談して、農作業を手伝わせ、

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 下村湖人「次郎物語」で朝倉先生が作ったとされる「白鳥蘆花に入る」という言葉は、湖人が禅語の「白馬蘆花に入る」を改変したものとのことである。 その意味は、白鳥が白い蘆の花の中に入っても、それと分からないが、しかし蘆の群落の様子を変えているよ

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言葉(5)  自分の種
2010年12月24日14:54

 何年か前、アフガニスタンだかパキスタンかで、ゲリラに殺された若者がいた。自分探しに行ったのだとのことだった。自分探しも命がけである。 なぜ、自分を探さなければならないのか。社会学者のエリクソンがアイデンティティ(自己同一性)が失われたこと

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  cultureという言葉には、耕作と文化の意味があり、これは農業から文明が始まったことを、そのまま表わしているのだ、と教えられた。エジプト文明はナイル川の灌漑農業あってのもの、メソポタミアもチグリス・ユーフラテスあってのものである。 しかし、考

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 グリム童話集の「白雪姫」は、雪のように白く、血のように唇が赤く、黒檀のように髪が黒いとある。グリム兄弟は、ドイツ民衆の伝えてきたメルヘンを採集したという触れ込みであった。したがって、これはドイツ民衆の美人三要素のはずであった。 ところが、

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 灘とは、波の荒い海路の意味だと辞書にのっている。ところで、瀬戸内海には灘が多い。鳴門海峡や関門海峡は当然流れが速い。特に、潮の満ち引きのときには。しかし、伊予灘、燧灘、播磨灘は瀬戸内としては広々として、流れが速いように思えない。そもそも内

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 実存哲学者サルトルの小説「嘔吐」は、中世の謎の人物の伝記を書くために資料を求めて、その人物の活動していた街にやってきた作家が、木の根っこを見て、石を握って吐き気がするというノイローゼ状態になる。なぜなのか、その原因を突き止めようとする、推

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 子供のころ読んだ日本昔話に「馬方と山姥」という話がある。今探すと、有名らしくてどれにも載っているのだが、覚えているのと同じものがない。 前半:馬方が塩サバを街へ売りに行く途中の峠道で山姥があらわれ、サバを一つづつ取られてゆき、とうとう馬ま

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 フェデリコ・フェリーニ監督の「道」という映画があった。確か、ばたばたといった三輪トラックで、大道芸人ザンパノが、金で買った知恵おくれの妻ジェルソミーナ(ジュリエッタ・マシーナ)をつれて、人の集まる街の辻で芸をして歩く物語である。その芸と言

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 「耳なし芳一」は、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)「怪談」にあるが、子供のころラジオ番組で聞いて、武士の呼びかける声や鎧の音などにふるえあがった。 琵琶の名手である盲目の芳一が、安徳天皇の墓の前で毎夜平家物語を謡っているのに気づいた和尚が

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言葉(2)  比婆山
2010年12月19日14:37

 比婆山とは広島県と島根県の境の山並みである。もうだいぶ前だが、比婆ゴンで有名になったことがある。古事記によれば、イザナミの尊の葬られた場所である。正確にいえば、候補地の一つだが、その息子スサノオの活躍の地が出雲であるから、ここが一番ふさわ

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 悪魔や魔女のドンチャン騒ぎの祭り、乱交パーティのワルプルギスの夜は、ゲーテ「ファウスト」に描かれている。これはゲルマン民族の伝承であるが、ローマ文明の方では、牧神バッコスの祭りである。ハイネ「流刑された神々」にも描かれている。しかし、これ

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 「静かなるドン」をネット検索すればまず漫画がでてきたが、ここは、ロシア革命に投げ込まれたドン川流域のコサック農民たちの、同族争う悲劇を描いたショーロホフの社会主義リアリズム小説である。主人公は直情径行、正義と人情に厚い熱血漢である。つまり

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 レオ・バスカーリア「葉っぱのフレディ」1982 は、日野原重明医師によってミュージカルにもなっている。 かえでの葉の一つのフレディは、新緑になり、また美しい紅葉になったことを誇りにしていた。しかし、やがて木と別れて落ち葉になることを知り抵抗す

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 ローリングズ「小鹿物語」1938 の原題yearling は、鹿や馬の一年子、つまり乳は飲まないが大人でもないという、人間の少年期に当たる言葉である。ここでは、まず、ジョディのペットの鹿のことであるが、もちろん主人公の少年ジョディと障害児の友達の比喩

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 「言葉」というとサルトルの自伝だが、ここではただ、今まで気になっていた言葉を解釈する。早い話が、素人語源学である。 さて、ジェントルマンである。これは、gentry からきているが、裁判権も持つ地方の大地主で、郷紳とも訳されていた。日本では地頭

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 アンナ・シュウエル「黒馬物語」1877 は、大地主の牧場にいた黒馬君が、地主一家の引っ越しにより売りに出され、ロンドンの街中で馬車馬になったりして苦労するのだが、賢く性格がよいために、いなくてはならない仕事仲間として頼りにされ生き抜いていく。

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 題名も作者名も忘れたが、私の唯一読んだオーストラリアの小説であった。野鳥の楽園になっている谷を訪れた青年が、この谷の由来を調べる物語である。移民してきた一家が果樹園を開き、三代にわたって経営していたのだが、付き合いが悪くほとんど知られてい

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 ジョーン・ロビンソン「思い出のマーニー」1967は、孤児院から親切な養母に引き取られたのだが、養母にも学校にもなじめず、アンナは心を閉ざしたままであった。心配した養母は、海辺の村にある友人の家にアンナをしばらく転地させることにした。すぐそばの

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 バーネット「秘密の花園」は、児童文学の古典にとどまらず、心理療法の古典でもあるだろう。箱庭療法などは、この話をもとにしているに違いない。 イギリスの親せきに引き取られた、ひねくれものの少女が、荒れ果てた庭園を元の美しい花園に復活させたいと

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 ほらふき男爵を思わせる、豪快なヒロインとその一家の経営するアメリカ南部の大衆食堂の物語である。失意の老婦人に、この一家の知り合いだった人が、慰めるために語って聞かせた。  背景には、南部の黒人差別とサザン・ホスピタリテイ(南部風のお客好き

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 シュテイフター「石さまざま」は六つの短編からなるが、なかでも「水晶」が有名である。夜の氷河の中に道を迷った幼い兄と妹が、兄の賢明な判断と妹の兄への信頼によって、捜索隊に発見されるまで無事であったという物語である。しかしなぜそんなことになっ

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 サリンジャー「ライ麦畑でつかまえて」は、おかしな題だと思って長く読まなかったが、とうとう手に取った。これは、かなり甘ったれで、したいことしかしない少年が、本音で喋りまくる饒舌小説であった。家出するために、寮を出た少年がどうなるのか、まさに

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 「釣りキチ三平」で知られる漫画家矢口高雄は、意外なことに農村嫌いだそうである。自然派漫画の第一人者とされているにもかかわらず。 それというのも、子供のころ弟が病気にかかった。母が医者に見せてくれと頼むのを祖父が拒絶し、弟は高熱に苦しんで死

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 ゲーテ「ウィルヘルム・マイスターの修業時代」を読み始めたのはよいが、難しいし、飽きるしで、なかなか進まない。しかし、ミニョンの出てくる場面だけは読み進めた。というか、ミニョンに引きずられて読みとばしたようなものだった。今見ても、同じことに

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 「よらしむべし 知らしむべからず」を調べようと思って、論語や事典を探したが見当たらなかった。そこでネット検索。どうやら二通りあるらしい。 「故事 ことわざ 四字熟語事典」によれば、 1.人民を為政者の方針に従わせることができるが、なぜそう

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 村上春樹「海辺のカフカ」や大江健三郎の「万延元年のフットボール」以後のものなどは、何の事だかわからなかった。しかし、それらはブラック・ファンタジーなのではないかと思い付いた。誰かが言っていたのを思い出しただけかもしれないが。 エンデ「果て

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 宮沢賢治はオノマトペが得意だった。「オッペルと象」の・・・のんのんのん、「風の叉三郎」の・・・ドッドド ドドウド ドドウド ドドウなど、有名である。 「セロ弾きのゴーシュ」では、下手な演奏家を、からかいに、はげましに動物たちがやってきて、

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 赤毛のアンの作者モンゴメリの描くものは、当時のカナダ農村(日本でいえば明治時代か)の生活を詳しく、美しく描いていて、そのことも人気の続く要因だそうである。しかし、それもアンの大ヒットによるものだ。 赤毛のアンのどこが良いのか。 まず、その

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 「柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺」 正岡子規の代表作であるが、これが、本人の理論のような写生句にとどまっているものだろうか。なるほど、写生だから情景はよくわかる。しかし、それがどうしたのか。・・・柿を食うという日常のくりかえしの中に、永遠

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