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2010年12月09日07:54

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小説の中の謎(36)  石頭列伝

 シュテイフター「石さまざま」は六つの短編からなるが、なかでも「水晶」が有名である。夜の氷河の中に道を迷った幼い兄と妹が、兄の賢明な判断と妹の兄への信頼によって、捜索隊に発見されるまで無事であったという物語である。しかしなぜそんなことになったのか。兄と妹の両親は、氷河のある峠の両側の村人であったが、この二つの村はいつからか、またなぜなのか誰にもわからないのだが、付き合ってはならないというおきてがあった。両親は強引に結婚したのであるが、母の実家へは幼い孫だけでしか行けなかったのである。
 つまり、意味不明の慣習を変えないという石頭たちであった。ドイツ語圏でも、日本でいう石頭を石でたとえるのだろうか。・・・分からない。
 他の物語も同様である。生涯にわたってけちけちと小銭をため込んだ世間知らずの牧師の物語「石灰岩」、時代遅れの、意地悪なピッチ売り(アスファルトのようなものか)「みかげいし」など。
 シュテイフターは、この石頭たちの支持者であった。決して悪くは言っていないのである。彼はオーストリア人で、日本でいえば幕末に生きた人であった。ドイツ統一は日本の明治維新とほとんど同時期であり、隣国とはいえ近代国家を目指しての動乱期である。
 この時に、古い石頭を支持するのは勇気がいったことだろう。
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