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日記一覧

 「文盲 アゴタ・クリストフ自伝」白水社2006 を図書館でみつけた。なにしろ短い。100ページ足らずで、ページ10行。短編と中編の間ぐらいだろうか。代表作「悪童日記」もそうだったが、まるでルナール「にんじん」のように乾いた文章であった。(ウィ

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 中西輝政「大英帝国衰亡史」PHP文庫2004(単行本1997)を、やっと積読から下ろして読み終わった。最近、日本の戦間期の失敗ばかり読んでいてうんざりであったが、口直しに丁度いいと読むことにしたのである。 内容は、エリザベス一世時代の興隆期から、

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 司馬遼太郎によって鬼胎として捨てられてしまった昭和戦前期の統治といえないような有様であるが、問題を解くためには、なぜそうなったのかという視点からのアプローチが必要であろう。 「統帥権干犯」問題、「陸海軍大臣の現役制」、「総理大臣の権限の小

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 山口泉「宮澤賢治伝説 ガス室の中の希望へ」河出書房新社2004 を図書館で見つけた。以前に読んだ、吉田司「宮澤賢治殺人事件」にならぶ賢治批判本である。著者は「宇宙の源の滝」で第1回ファンタジーノベル大賞優秀賞をとっている人でファンタジー作家の

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 連載が完結して、作者の吉田修一が読売新聞に作者の弁をのせていた。それによると、今の日本人は怒りの表現ができなくなっている。その問題を書きたかったが、うまく書けたという気がしない、ということだった。 先の日記では、この小説のテーマは、犯罪を

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 図書館で、若島正「ロリータ・ロリータ・ロリータ」をぱらぱらめくっていて、やっと少し分かってきた。昔、ポルノだと思って読もうとしたのだが、とてもじゃないが手に負えなかった。書評では誤解しないようにと注意されていたのだが。 「ロリータ」は殺人

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 2チャンで、明石やさんまと韓国のユンソナとの対談が紹介されていた。彼女の言うには、友人を家に招くときは貴重品を隠すようにしている。日本人はそういう細かい配慮がない、といったの対して、 さんま:そんな人は友達ではない。 ユンソナ:みなそうし

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 前回の「漱石のたくらみ」の紹介で、もう少し漱石と明暗の状況をはっきりさせたくなった。しかし、どういうわけか家に明暗がなく、近くのブックオフにもなく、図書館も休みとなれば、おまけに「漱石のたくらみ」を所蔵している図書館が遠いとなれば、来週に

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 熊倉千之「漱石のたくらみ 秘められた明暗の謎をとく」筑摩書房2006 を図書館で読んだ。著者はサンフランシスコ大、カリフォルニア大にて日本文学の学位を取得、アメリカと日本で大学教授だったとのことで、異色の経歴であろう。 この著書は題名のとおり

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 楠本君恵「出会いの国のアリス ルイス・キャロル論・作品論」をぱらぱら読んでみた。著者は「アリス」のテーマはアイデンティティの問題だという。兎を追って地下に降りたアリスは、大きくなったり、小さくなったり、首がのびて蛇に間違われたり、さらに威

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 読売新聞の吉田修一「怒り」の連載がそろそろ終わろうとしている。著者については全く知らなかったが、ブックオフには文庫本が並んでいた。警察小説の名手だとのこと。この連載小説も、老夫婦殺害犯人を追う刑事の動向で場面が動くようになっていた。 しか

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 映画「ウエストサイド物語」1961 は、確か高校生だったと思うが、教室でも評判で何人かと見に行ったことを覚えている。指をならす威嚇のアクション、足を揚げて踊るモダンダンス、それに名曲の数々とマリア役のナタリー・ウッドの美しさに見とれていたもの

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 大河ドラマの「八重の桜」の関連で歴史読本7月号は山本覚馬の特集だった。会津の砲術家として江戸に派遣され佐久間象山や江川英龍に砲術を学ぶとともに、横井少楠、勝海舟、吉田松陰や勝海舟と親しく交わり、京都守護職となった松平容保に従って京都に行っ

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 アルハンゲリスキー「プリンス近衛殺人事件」新潮社2000 は重い内容であった。著者は、ソ連時代から著名な作家、ジャーナリストで多くの要人と知友関係にあり、ソ連崩壊後も、その人脈で機密文書にも触れることができたという。本書は、日本兵のシベリア抑

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 ゴールディング「蝿の王」1954 は、ノーベル賞を受賞した小説ということで、だいぶ前に読んでは見たのだが、もう一つどう読めば良いのかとまどうものだった。下敷きになっているジュール・ベルヌ「十五少年漂流記」の方は子供のころ読んでいて、いかにも少

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 前回は用事ができて尻切れトンボだった。 「昭和」という国家は、古典的な国益を中心にして意志決定する国家ではなかったのでないか。北一輝の思想にみるように、天皇の求心力は衰え、天皇自身がテロの危険を感じていたという。そう言う意味では、丸山眞男

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 題のない歌 萩原朔太郎南洋の日にやけた裸か女のやうに夏草の茂つてゐる波止場の向ふへ ふしぎな赤錆びた汽船がはいつてきたふはふはとした雲が白くたちのぼつて船員のすふ煙草のけむりがさびしがつてる。わたしは鶉のやうに羽ばたきながらさうして丈の高

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 私が昭和戦前史に関心があるのは、司馬遼太郎「「明治」という国家」日本放送出版協会1990 の昭和版を書きたいからである。司馬は、昭和戦前期は左右のイデオロギーの闘いのみがあり、リアリズムがなかった。明治とは別の国、別の民族のようだ、と嫌悪感を

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