ニホンの近代なるものが欧米のものと比べるとやはり付け焼刃的だ、というのは耳にたこができるほど巷にあふれている話だ。
そしてここにきて、ニホンのメディアがとる権力との距離に、唖然とさせられるようなことが増えているので、ニホンの言論人についてのシリアス性をおおいに疑ってしまう。
要するに危機なのである。
マスコミが本来的に目指すべきものは、その情報によってわたしたちの世界の成り立ちへの理解が深まるかどうかにあるはずだ。
しかし世の中には、どうでもいいような情報が闊歩し、より怖ろしいことには、権力におもねったマスコミが増えてきている。
この作品には豊富な、そしてすこぶる興味深い話が詰まっているが、とりわけ主要な話というと、このことにつきる。
十年まえの刊行、それからニホンの政治はとんでもない方角へと迷走し、そしていま、ヨーロッパとイスラム世界との関係がかつてなかったような緊張をはらんでいるとき、ニホンのマスコミはどんな位置をとるのか。
読み手こそが試されているという印象さえ抱く。
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