安岡は自分のことをこれでもか、これでもか、と描いているから、僕の昭和史なんて既視感でみちているのではないかと思って、ほとんど期待していなかった。
安岡は、自称ナマケ者、はみ出し者で通っている。
いわゆる世間を斜めに見る術を心得ている。
しかしながら、腐っても鯛、というか、あくまでも陸軍大尉(のちにさらに昇進)の一人息子。
たとえば戦後に安岡は零落した父親を戯画的に描いたが、すくなくとも戦中は恵まれた存在であったはず。
すると、すべては安岡のポーズか。
とはいっても、じつは安岡の在り方は、わたしの生き方にも似通っていて、だからこそ近親憎悪的な、皮肉な眼差しをなげかけてしまう。
いや、いや、酷な言い方はやめよう、
安岡の冷めた捉え方、周縁的なものにこだわる考え方、コンプレックスにみちた生き方をじっくりと味わうにかぎる。
とにかく安岡個人のことはそのくらいで措いて、時代の切実さをあらためてひしひしと感じさせる作品だ。
安倍・トランプ時代ということで、どうしても息苦しさを感じてしまう昨今、時代が重なって見えてしまうのは、はたしておのれの罪なのか。
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