今最も注目される英文学(アイルランド)作家の一人ということで借りてみた。
面白いし、なかなか考えさせられる恋愛長編だった。
アイルランドの名門大学生21歳のフランシスは、
一番仲の良い、同じ大学生ボビー(女子)と、過去には恋愛関係にあった。
美しく賢くて裕福なボビーと共に知り合ったのは、
やはり裕福な三十代カップルのメリッサとニック。
やがて、とてもハンサムなニックと恋に落ちたフランシスは……
四角関係の恋愛もの、とひとくくりにできないのは、
主人公が文才に恵まれているのに、貧乏な出自を持ち、
そのことで必要以上に自己を卑下する傾向が見られる点だ。
アイルランドと言っても、所詮イギリス、ということか。
自分は奨学金を得て、しかも不安定な父親からの振込が滞っても
親友のボビーにさえ隠そうとする。
ドロドロ恋愛ものがベースなのに、
英国特有のクラース(アッパーミドルとかワーキングクラスとか)の
匂いがぷんぷんする会話や独白が溢れている。
例えば、フランシスは裕福な人に囲まれているせいか、
自分の階級の喋り方と、母音の発音が違って気取ってきてしまっているのではないか、と心配する。
それに比べると富裕層のボビーの方が
労働者階級と気兼ねなく喋れる、とフランシスは感じる。
私はオーストラリアで3年あまり、一時期は日本語ゼロ状態で暮らしてきたから、
言下の階級意識みたいな雰囲気は、理解できる。
日本でも格差社会と言われているけれど、それはほぼ収入格差の話だろうが、
英連邦の国では未だに事情が異なるのではないか、
という事を、フィクションながらも改めて確認できたように感じる。
この点で、この小説は、
ワーキングクラス或いは貧困層の天才女子の、孤軍奮闘ものがたり
といえないこともない。
その側面が、独特な作風というか展開を与えて、
特別に個性的な物語になっている。
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