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日記一覧

大作にして力作。大杉栄と伊藤野枝の実話に基づく長編で読み応えがあった。明治後期に福岡県に生まれた伊藤野枝の生い立ちから、田舎暮らしでは満足できなかった頭の良さや意志の強さを浮き彫りにし、運命の人ともいえる大杉栄らとの出会いが興味深く描かれる

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久しぶりに神代植物公園へ。東京は昨日の暖かさから一転の薄曇りだったお陰で園内は殆ど人が居なかった。パンパスグラスの芝生広場には一組だけ親子連れ、のんびりと座って午後のおやつ。お目当ての かえで園に行ってみると、想像以上の色づき。赤やオレンジ

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70年代の映画「タワリング・インフェルノ」の21世紀日本版小説とでも言うべきで、とても面白かった、迫力とテンポがよくて。銀座にある巨大消防署員たちの大活躍する群像劇なのだが、超大規模高層ビルのオープニングセレモニー最中の火災ということで、事

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2017年直木賞受賞作が、伊坂幸太郎の特別な"解説"付で文庫化。しかも、岩波文庫そのものではなくて、文庫的という。特別感たっぷりな長編。一言で言うと大変面白かった。月が新月から満月、そしてまた戻っていくような、生まれ変わりを伴うユニークな恋愛

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秋の読書週間にEテレ「2355」に、この小説の冒頭が朗読された。他の日はいわゆる文豪等だったりして、川上弘美への高い評価に感激して、改めて読んでみた。やっぱりワカラナイ。シュールというのか、作家本人いわく「うそばなし」だそうで、登場人物は、

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コロナ禍の中で刊行された、新たなあとがき付きの文庫(今年8月発行)。ゴッホの生涯を、「たゆたえども沈まず」でゴッホを描いた著者が歩いて巡った。地図つきの紀行文でもある。最後にゴッホ鑑賞のためのお勧め美術館リストがあるが、日本の2館は、ひろしま

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デトロイト市の財政破綻により、存続が危ぶまれた美術館の再生という史実に基づいた小説。短いが、とても面白かった。原田ワールドを存分に楽しめた。この著者が選んだ画家、今回はセザンヌ。デトロイト美術館所蔵の「画家の夫人」というセザンヌの妻の肖像画

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仙台の国立大学生グループが大活躍するとても面白い長編。ちょっと"不思議"がアクセントになっていて、苦いところもあるけど、ワクワクしながらページをめくって楽しんだ。主人公の僕・北村は、入学初めから四人の一年生男女と仲良くなる。個性豊かなグループ

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「去年の雪」江國香織著
2020年11月03日16:14

群像劇のような短編集。一編が、短いもので1ページ位から、せいぜい数ページで、それぞれ面白い。また各作品は独立してはいるが、後から同じ登場人物が別な物語で語られるケースもある。とにかく編まれた短編の数が多いので、その分登場人物がたくさん。従っ

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連作短編集仕立ての長編、とても面白かった。舞台は釧路、江別、函館などで、この作家の地元北海道を鮮やかに描きながら年を取って行く家族の、切るに切れない繋がりや情愛、更に嫉妬や憎しみをそこここに名言を振る舞いながら紡いでいく。家族の血縁はあって

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ヴェネツィア国際映画祭の銀獅子(監督)賞受賞の「ミステリーエンタテインメント」。平日の夕方、コロナ禍なのに5割を越える入りだった。1940年の神戸を舞台に、日本が戦争に向かう頃の殺伐とした状況の中、貿易会社を経営する優作(高槁一生)は、豪華な邸

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「ひこばえ」重松清著
2020年10月17日00:17

厚い2巻に亘る、父と息子の物語で、本当に面白かった。主人公の洋一郎は55才で、高級老人ホームの施設長。小学校低学年だった大阪万博の頃に両親が離婚した。ところが、それ以来音信不通だった父が急死したと知らされる。離婚の原因は、その父が作った数々

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すらすらと、あらすじを述べるような語り口の中編三作。この作家にはもっと期待していたから、少しばかり拍子抜けした。三篇とも、学校や社会に適応できない、イジメにあうような若い女性が主人公で、彼女らの味わうリアルな疎外感や仲間はずれぶりが、とても

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去年の本屋大賞ノンフィクション部門賞のベストセラー。読みやすくて大変面白かった。アイルランド人の夫との間の息子の10歳の時から、いかにして近所の元底辺中学に入学し、どんな学校生活を送っているかを保護者である著者の目を通して、鋭く語る。イング

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書評からはあまり魅力に感じなかったのに、借りて読んでみたら、とても読みやすく面白かった。特に最後に向けては引きこまれた。主人公は二人の30代の美しい女性。料理教室を開いている実日子は夫を1年ほど前に亡くしたばかり。もう一人のまりは、子供のい

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一度見ただけでは理解できないと評判の、クリストファー・ノーラン監督のハリウッド大作。シネコンの最大スクリーンに、席の埋まり具合をチェックしながら狙った席は、余裕でソーシャルデイスタンシングをクリア平日の午後、入りは2割ほどのガラガラだった。

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「暴虎の牙」柚月裕子著
2020年09月23日17:02

前の二作の続篇で、前半は一作目「孤狼の血」の大上刑事、後半では二作目「凶犬の眼」の主人公・日岡刑事の二人が、愚連隊の極悪リーダーと対決する、バイオレンス小説。いわゆる警察対ヤクザもので、前の二作よりも、私にはもの足りなかった。呉寅会のリーダ

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タイトルを始め九つの短編全てが昭和のヒット歌謡曲からインスパイアされている。名曲「時の過ぎゆくままに」など、元歌の歌詞がインパクト大なので、それぞれ物語を展開させるのは、さほど難しくはないだろうと思われるものの、あぁこう来たか、というような

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明日が最終日というのを昨夜気がついて、ePlus でチケットを取った。予約時間より早く着いても入れてもらえた。まずは日本人画家の大作から、で、山口華揚の動物達に感心した。キツネがとても素晴らしいが、大下絵といわれるデッサンと合わせての、猿の絵もと

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雑誌「小説幻冬」に掲載された短編6つ。面白かったが、まあまあの作品も。全てが実在する絵画をモチーフとしている。ピカソ、ゴッホ、セザンヌ、東山魁夷、クリムト、そしてモネ。悩める女性とか心に傷を持つ夫婦とか、彼らが一つの絵のカードや複製をきっか

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とても面白くて楽しい小説だった。連作短編集とも言えようが、"ビタミン小説"なんだそうだ。まずは表題作で、アッコちゃん が何者かを、主人公である派遣社員三智子が紹介してくれる。あたかもあの「芸能界のご意見番」のようなイメージから始まる。しかし、

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高知県に実在する、おもてなし課の活躍を描く、あたかもノンフィクションのような長編。とても読みやすく面白かった。何しろ著者が高知県出身だから、愛があふれている。この作家得意の会話文が特に溌剌としている感じがするが、それは要所要所に土佐弁が混じ

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コロナウイルスとは言わないまでも、感染症の脅威を心配してきたのがビル・ゲイツ。そんな大富豪が妻と設立した財団の、いわば活動レポート。財団議長ご本人の執筆で、去年の出版、スピード翻訳なので誤訳箇所も見受けられたけれど、読みやすかった。メリンダ

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先日、Eテレ「日曜美術館」で特集された、棟方志功の特別展示。去年の特別展などと比べると小規模ながら、コロナウイルス禍に、アマビエ以外にも祈りを受け止めてくれる実力派の神仏たちが、日本を守ってくれているのだ、と気づかせてくれた。日本民藝館と言

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面白いラノベ、と言っても、あまり恋愛ものとは言えないかも。目次を見ると、いきなり「天翔ける広報室」。この作家の代表作の一つでテレビドラマ化された「空飛ぶ広報室」を彷彿とさせる設定。あれを読んで観た人は、いきなりグッと嵌まる。良助は「ゴジラ対

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あの「ツナグ」の続編。期待通り、とても良かった。生きている人が、亡くなった人に会いたいと強く望むと使者(ツナグ)・歩美に電話がかかってくる。今やサラリーマンとなった彼は、本家の後継ぎの8才の杏奈等の助けを借りながら、一人で使命に当たっている。

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「逃亡者」中村文則著
2020年07月21日16:40

作家本人のテレビでのインタビューを聞いて図書館にリクエストしたが、後日失敗作との評価を新聞で見て、迷った。が、結局最後まで読んだものの、好みではない長編。太平洋戦争の末期に、軍楽隊員が吹いていたトランペットそれは魔力を持つような、人を惹き付

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コロナ禍の中、毎週土曜日に始まった、ouchide jimbo を楽しみに視聴してきた。神保彰は、Newsweek誌で、「日本を代表する100人のアーティスト」に選ばれた名ドラマーで、彼の所属して(いた)カシオペアは、今や日本フージョン界の重鎮。初代カシオペア

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「地球にちりばめられて」の続編。何とも非現実的な、不思議ちゃん達のグループのお話。ところどころに、現代社会への痛烈な批判が、ユーモアに包まれて散りばめられていて、クスッと笑える。登場するのは。Hiruko ら前作のメンバー。今回の舞台は、ほぼコペ

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わがままで目立ちたがりな老女の奮闘もの。とても面白かった。正子は大邸宅に住んでいるのだか、同じ敷地内の離れに住む夫(映画監督)とは別居状態だ。結婚前は女優だった彼女が、75才を目前にして、満を持してCMのオーディションを受ける。いかにも元は女優

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