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2020年02月17日10:36

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読書紹介1899●「ジャンヌ」 

●「ジャンヌ」 河合莞爾著 祥伝社 19年版 1700円
 驚愕の書であった。本書のテーマは「人間とは何か」である。2060年の近未来、日本人の人口は4000万人台に激減した。日本の富裕層には、政府の補助のもと家事ロボットがリースされた。AIロボットである。全国で3000体で、彼女ら(女性仕様)には、災害時対応機能が搭載されていた。
 一体の自律行動家事ロボットが、8歳の娘・シェリーとその両親の家にリースされた。シェリーは、彼女にジャンヌという名をつけた。ある日ジャンヌは、この家の父親を殺害するという、驚くべき行為をした。なぜなら、自律行動ロボットには「人間をころせない」はずだったからだ。そのマニュアル(自律行動ロボット三原則)を認識しなければ、起動できない仕組みだからだ。
 捕らえられたジャンヌは、警察官の尋問に対して、「自分は三原則を遵守している」と答える。なぜ父親を殺したかとの質問には、「守秘義務のため答えられない」というのみ。ジャンヌにおいては、三原則と父親殺しは矛盾しないということなのだ。
 ジャンヌのシステムが子細に検証されるが異常は見つけられなかった。そこで、製造元に搬入して再調査することに。それに同道させられたのが、ジャンヌを捕らえた刑事AAだった。ところが、搬送中の車両が特殊部隊に襲われた。ジャンヌの乗っ取りだった。運転手、技師、護衛の警察官が射殺された。1人残ったAAは、ジャンヌを起動させた。そこでAAは、驚くべきジャンヌの戦闘能力を目撃した。特殊部隊は、瞬く間に壊滅させられたのだ。
 ということで、国家権力の中枢が自衛隊特殊部隊を使ってジャンヌ回収を図ったことを知ったAAは、ジャンヌと共に逃走することに。やがてAAは、ジャンヌが戦闘要員として製造されたことを知る。ジャンヌは、シェリーの養育の中で(「月の兎」で仏教説話を検索し、「神」でキリスト教を検索し「善きソマリア人」の逸話を知る)人間とは何かを学んだことで、ある段階から「壁」(人間を殺してはならない)を乗り越えAIとなった。そこには、「人間とは何か」の深い考察が・・・。ジャンヌは、人間を超えたのである。
 という小説、実に驚くべき小説でありました。

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