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2024年04月17日09:25

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読書紹介2390●「思い出せない脳」

●「思い出せない脳」 澤田誠著 講談社現代新書 23年版 980円
 著者は冒頭で、「ネット検索できる時代でも、記憶力が必要な理由」を明らかにする。記憶力とは、その人自身が有利に生き抜き、充実した人生を送るために必要なもので、現在の生活だけでなく、将来の生き方を左右する能力であるとしている。
 そしてその記憶をつかさどる脳について、まず生き残り、そして子孫を残すために、記憶という能力を発展させたこと。とっさの判断や無意識に下してしまう数々の判断は、脳内の記憶をもとに行われるのだ。
 こうして、私たちのそれぞれの脳の中に外界を解釈するために、記憶をもとに作られた自分だけの世界(これを「マインドセット」という)を持っているのだ。ということで、脳の各部位の働きなど最新の研究内容が本書では描かれていく。
 そこで、本書のテーマである「思い出せない脳」のことである。まず、名前だけ思い出せない理由。それは、名前が「意味記憶」だから。これは、太古の人類には必要がなかった記憶(必要なのは、自分を襲いに来る生き物の、唸り声やにおいやシルエットの記憶)、つまり生存に必須ではない記憶だから、情動が動かず、脳にとって思い出しにくいのだ。
 次に、「不要だと判断された記憶は失われていく」こと。使わない記憶は、ネットワークを作るのに必要なシナプスを脳が刈り取ってしまうのだ。この脳の忘れる仕組みが備わっているおかげで、私たちは過去と現在を区別することができるのである。
 更に、「脳の『いい加減』さには理由がある」こと。現代の優秀なオフィスワーカーを、生存競争の激しい太古のジャングルに放り込むとする。すると、細かい計算ミスや誤字を見つける能力は何の役にも立たない。脳が太古のジャングルのような環境から発達したと考えたら、いい加減さに理由があることが分かる。脳は、できるだけ早く、危険か、そうでないかを判断したいのだ。その判断に必要な情報だけを優先的に集め、処理をするので、細かいことは気にしていられない、という訳でありました。

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