健康であれかし。よりラディカルには、健康は万民の義務である、とか。
そんなイデオロギーで包まれたディストピア社会が伊藤計劃『ハーモニー』で描かれるが、それはすでにザミャーチンが考えたことでもあった。
複数の作品を同時に読んでいると、微妙にシンクロしてくる。
その関係性に、たとえ偶発的なものでも気づくことは、きわめてオリジナルなこと。
またはそれまでの自分の学んできたことを基にして関係性を読み取ること。
ソルジェニーツインの『ガン病棟』、スターリン時代のことであるが、そのX線療法は当時のニホンのものより優れていたのかどうか。
ガン患者は、とくにひところはその痛みに悩まされたものであり、ガン病棟であるから、その生死さえおおいに危ぶまれたものだったはず。ちょうどずっと昔のニホンの結核療養所のように。
痛みが、健康が、このふたつの作品によってその両極端が示されていると思ってもいいはずだ。
あらかじめの考えがあったわけではなく、たまたま読み始めていたふたつの作品。それがこれほどまでのコントラストを示すとは。
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