これもポレミックなタイトルであるが、まず思い浮かぶのは、解剖学者ゆえに死というものがかなり即物的に描かれているのではないか、という思いで、医科系のひとはたいていそうであろう。
うちのおやじさんも、医科の末端のその末端のようなひとであったが、畑仕事をしていて近くの婆さんが電車に身を投げ、その残骸をビニール袋に収める警察の仕事を手伝ってた、と聞いたときは、少なからず呆然としたもの。
しかし本書は、死を通してみたニホン文化論というノリ。
近代先進国では、死は見えないものとして扱われる傾向があり、しかしながらメキシコのようなところでは、死がきわめて可視化されている、というのはオクタビオ・パスとかも述べていること。
そんなタブー化されたなかで、どこまで死について語られるか、という関心あり。
まったくつまらない展開ではないが、たとえば「おくりびと」とかのほうがおなじテーマを扱っていてもインパクトが強いと思う。
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