作者を投影させたような主人公の、ベルリンでのシングルライフの物語。
読みやすくて興味深く面白かった。
エッセイっぽい長編小説。
留学生同士で結婚し、ドイツの小さな町から
ベルリンへ住まいを移したところで離婚したミサ。
翻訳の仕事をしながら、趣味で小説を邦訳し、一軒家に住んでいる。
日本では地味だったのに、ドイツでは人を惹き付けるようになり、
例えば車イスのスージーという親友や、
南米がルーツのカップル等、友だちに恵まれている。
引っ越して間もなく知り合った隣家のMさんは、
ずっと年上の男性で、その男性パートナーは旅行中。
一人暮らし同士で意気投合したところ、
ミサはMさんから太極拳のクラスに誘われる。
そのクラスには、国際色豊かな生徒が集まり、
ミサがだんだんと親しくなって行く様が好ましい。
ネタばれになるかもしれないが、
特に、"亡霊" 騒ぎのエピソードが面白いし、
一軒家菓子店の女性オーナーの話も。
太極拳のクラスでは、ドイツ語がもちろん公用語なのだが、
「BBCアナウンサー並み」のきれいな英語を話す
フィリピン人がいて、そのため英語とドイツ語を使い分けるシーンでは、
ミサが、「英語だと優しく話すのに、ドイツ語になると厳しくなる」と感じる人がいる
など、いちいち頷けて、楽しい。
ハリウッド映画だと、英国英語を話す人は、
大抵、悪ものか意地悪なんだけどなぁ、と私は思うのだけど。
また、ミサが一人で郊外の方へ訪ねて行く際に
電車とバスを乗り継ぐ、という過程が新鮮だった。
海外はオーストラリアとアメリカしか私は住んだことがないので、
女性一人が公共交通機関で遠出するなんて!
ものすごく危険に感じてしまう。
そう言えばミサは車を持っていない。
太極拳クラスのフィリピン人が、実家の本は英語だと言う。
ミサの家の本は日本語なの?良いわねぇ
みたいな会話があり、
この作家が、常に言語を意識していることを
改めて認識したのだった。
ベルリンでの日常生活が、さり気なく描かれていても、
深く考えさせられる小説。
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