mixiユーザー(id:7990741)

2022年01月21日14:57

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「ブラックボックス」砂川文次著 (群像 2021 8号)

今回の芥川賞受賞作、読み応えあった。
比較的平易な文章で、ずんずん読めるのだが、
ここというところでは、鋭く深く掘り下げた感があって、
その辺りが受賞の要因なのかも、と感じた。
情景描写よりも、人の心の奥底を描くのがうまい、というか。

主人公サクマは自転車メッセンジャーをしている若い男。
新宿のはずれにあるオフィスには、ベテランから若者まで
年を取るまでは続けられない、体を使うこの職から、
何とか転職しようとしている男たちが集まっていた。

少しネタばれかもしれないが、
サクマには怒りが溜まると抑え切れなくなり、ブチ切れるという致命的な短所があり、
本人は気にしてはいるものの、抑制できずに、そのために
自衛官から始めて、いくつもの職を転々としてきた。

それでも自転車に乗ることが楽しいこともあり、
貧しくとも比較的安定した生活を営んで来ていたのだが…

これを読んで思い浮かべたのは、去年見た映画「すばらしき世界」だった。
役所広司が演じた主人公も、このサクマみたいに、
一度キレると歯止めが利かないタイプで、恐ろしい事をしでかす。
フィクションとはいえ、この2本の作品の評価が高いことからも
現代の日本には、サクマのような、普段はまともなのに
一旦キレると恐ろしく乱暴を働く輩が増えてきているのだろうか。

治療を要するような人なのに、そのまま世間で健常人として生活していると、
なんだか薄ら怖いな、と感じてしまった。

そういえば、映画「ディア•エヴァン•ハンセン」も、
精神科のクリニックで処方薬をもらっている男子の物語だったな、と思い出す。
ま、彼の場合は穏やかな子だったけど。

また、西加奈子の「夜が明ける」では、性格にはあまり問題はないが、
極めてブラックな仕事をしている、若い男が主人公だった。

全てフィクションてはあるけれど、なんか重ねて鑑賞すると、
今の世間には、こんな波が来ているのか、と構えるような気持ちになる。

「ブラックボックス」の作家はまだ新人だし、自らの経験を多々反映させた著作だろうと思われるが、
西作品は、細かく取材して得た知識によるベテラン作家の著作で、
2作とも、生きにくい世の若い男たちを描いているからこそ、
その対比が面白く感じられた。

今挙げた作品の作者の、次の作品は絶対チェックする、間違いなく。




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