明治の終わりから大正にかけての、女文士の物語。とても面白かった。
が、表紙がバリの風景なのに、なかなかそこにたどり着かない、
その点もそそられた。
山中すてらは、生みの母に捨てられ、クリスチャンである育ての父に大切に育てられてきた。
岡山で教会に通うような熱心な信徒であり、
修道女のマリア先生のお陰で、
あの大原孫三郎と知り合い、彼の経営する倉敷紡績で寮住まいの女工となる。
彼女が12歳のことだった。
マリア先生のお陰で英語も習得し、更に文学少女を貫き、給金の多くを教会に寄付する日々。
が、20歳を迎え、慣例として肩叩きにあい退職、次に住み込み女中となるが……
やがて舞台は東京に移り、たゆまぬ努力と勤勉さ、そして恵まれた才能によって
すてらは女文士の道を目指す。
出てくる人物が生き生きとしていて、時代の空気が伝わってくるのは、
この作家のいつもの作風だと安心できる。
それに、作家の物語なのに、重要な登場人物の一人が大原孫三郎だから
当然のようにフランスの印象派絵画が大切なモチーフとなってくる。
(まだ大原美術館創立の前)
セザンヌの絵画の描写が、初めは画家名を明かさずに、それと読み取らせてくれるところなど
読者へのお楽しみクイズみたいで、ここもとても好ましい。
こんなにも表紙を気にしながら読んだ小説は、久しぶり。
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