世界的な版画家の実の孫による、棟方志功の作品製作の様子と暮らしぶり。
つまり、同居していたからこそわかる細かなエピソードが、そこここで光る著作だ。
国際的名声を得た芸術家との暮らしって、こういう感じなのか、ともわかって面白い。
前半は、過去の展覧会の図録への著者の寄稿をまとめたもので、
主に平成になって国内各地で開かれた特別展の主作品の解説を目的として記されている。
暮らしぶりのエピソードとして圧巻なのは、茶道の素人が開く「実験茶会」。
第一回の参加者は川端康成や團伊玖磨ら。第三回の点主は岡本太郎、
そんな第二回の茶会を、荻窪のアトリエで開いたという。
この話は本当に面白かった。
後半は、富山県南砺市福光町への疎開生活を核とした、
棟方の製作の様子や交友関係を゙、22年から23年に北日本新聞にコラムとして連載したもの。
実は石井自身も福光町で、棟方に関する資料の収集整理のため住まっているので、
制作が行われた場所、関わった人々の親族等と、実際に触れ合っているからこその
リアリティと親密さが描かれていて、大変好ましい。
また、草野心平との交友や倉敷の大原美術館を゙興したクラレの創業者大原總一郎との関係など
昭和の著名人が次から次へと登場して実に面白い。
戦前戦後を゙駆け抜けた天才の、ちょっと可愛らしいような挿話を楽しみつつ
やはり偉人の周りにはそうそうたる大物が集まってくるのだな、と改めて感心しながら読了した。
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