mixiユーザー(id:7990741)

2025年06月30日11:39

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「飽くなき地景」荻堂顕著

吉川英治文学新人賞受賞作なので、さすがに面白かった。

戦前から平成まで、東京の目白台の大邸宅を構える烏丸家の
本妻の一人息子でありながらも、実父と折り合いの悪い治道の半生。

審美眼に非常に優れて、周囲から殿と呼ばれる祖父を敬愛する彼は、
自身も審美眼を養いながらも、早稲田の学生として文系を選び
将来は美術館に携わるような仕事をしたいと望む。

ゼネコンのワンマン社長の父には、愛人に産ませた息子がいて
その直生は東大の建築学科の優秀な学生だった…

昭和のメロドラマみたいな人間関係でありながらも、
刀を始め、様々な美術品が描かれ、更に中盤からは
日本中を沸かせた実在の人物をモデルにしたような登場人物が出てきて
読み手の興味をかきたてる。

ゼネコンが舞台でもあるので、時の首相の名前も挙がり、
少しきな臭いような面白さもある。

地景とは、刀の刃の模様のことでもあるが、
一般の意味で述べられた時、そう来たかというような展開を味わえる。

財力と人脈に恵まれた高等遊民の物語の側面を持ちつつ、
没落するのを何とか乗り越えようとする一族の生き様を
治道と直生の確執を通して描ききっていると思った。

出てくる地名が全てわかるので、読みやすかった。
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