23年下半期の直木賞受賞作。リアルな異体験をした感じ。
この作家は北海道の酪農家の娘として育ったそうで、
小説の舞台は北海道の東南、白糠辺り。
自然の描写が半端なく詳しくて、
笹の葉音とか、梢の高い所から落ちてくる雪の様子がありありと目に浮かぶよう。
更に、獣の臭いがポイントでもあるのだけれど、
これに関しては、読み手としては想像したくなくなることも。
あまりにもリアルだから。
主人公の熊爪は、養父に山で育てられたたくましい猟師で、
有能に育てた猟犬と山の中の小屋で暮らしている。
数羽の野鳥でさえも識別し、その上鳥から識別されていると感じているほど。
自給自足の生活でも、時には獲物を巧みに加工して白糠の町に売りに行く。
鉄砲の弾やタバコ、酒、そして米を買うために。
買ってくれるのは羽振りの良い商家の主なのだが、
この人物が大変個性的だし、その店に出入りする者達もワケありだ。
そんな中、一匹の巨大な熊と遭遇し、熊爪の生活の歯車に狂いが……
北海道出身女性で直木賞作家と言えば、私の推しは、釧路ノワールの桜木紫乃。
彼女の情景描写は素晴らしく美しいけれど、
登場人物たちは、社会の底辺に近いところのきれいに生きられないような人が少なくない。
(中でも「氷平線」は、私には衝撃短編集だった。)
時代設定の相違があり、河崎秋子ワールドは同じ東北海道で、
厳しい環境に主人公がいるという共通点があっても、
桜木ワールドとは大きく違っていて、そこが面白かった。
一般的には、この小説の方が衝撃作なのだろうとは思う。
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