電車の中づり広告で見かけた、3年前出版された単行本の新刊の文庫版。
昭和を舞台にした、家族の大河ドラマのような長編だけれども面白くて、ずんずん読めた。
主人公の左織は、昭和一けた頃に東京で生まれ、家族と離れて疎開した辛い経験を持つ。
そんな彼女に、偶然、覚えてもいなかった疎開仲間の風美子が声をかけてくる。
左織は、ちょうど見合い相手と結婚を意識していた頃で、結婚=永久就職を女の幸せと信じて疑わないタイプ。
反対に、左織に輪をかけて苦労してきた風美子は、その容姿を武器に、さらに才能を開花させて
戦後には珍しい、職業を持つ女性として頭角を現す。
およそ性格の違う女性二人の半生記なのだが、戦後まもない昭和の東京を生き抜く様子が、
それほどの波乱はないのだけれど、たとえば(都立)西高などの固有名詞を配して、
的確にリアルに描かれていて、興味がそそられ続ける。
典型的な昭和の夫を持つ左織の、不器用なというだけでは表せないような子育ての下手さに、
しばしばイライラさせられる。
が、そんな彼女の性質の根幹には、疎開先でのイジメ(いじめっ子の片棒をかついだ)という苦い経験がある
という点が、しばしば語られていて、その意味において、
この8月15日に読み終えるにふさわしい長編小説だった。
因果応報ということを、頻繁に主人公が口にする。
いじめた方は覚えていない、ということを何度か目撃する左織と風美子。
同窓会と称して疎開仲間に接触するところなどで、もっと劇的なことがおこってもよさそうなのに
などと、少し物足りなさも感じた。
次々と発売される家庭電気製品や、姑と嫁の陰湿な悪口バトルなど、
昭和のお話なのだなぁ、と懐かしいところも多々あった。
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