棟方志功の研究者であり、閉館した棟方板画美術館の元学芸員で、
志功の初孫でもある作者の、初めての書き下ろし著書。
美術関係の雑誌に連載コラムを何本も書いてきたものをまとめた本は、今まで出版されてきたが
書き下ろしはこれが処女作だという。
タイトルに小さく「生涯と作品」とあるが、まさに偉大な芸術家の生まれたところから亡くなるまで
たっぷりの名作の写真と共につづられていて、しかも読みやすい、
棟方ファンには必読の書であると共に、他では絶対に公開されえないプライベート写真(白黒で小さい)が特典として(?)付いていて、
最後の最後まで読ませる、やさしい解説・研究書であり作品集でもある。
当然、世界のMunakata としての一歩を進めさせた「二菩薩釈迦十大弟子」や「東北経鬼門譜」、
そして後期の傑作「審判の柵」などなど、主だった作品を、ほぼ時系列で掲載し短い解説が付されている。
また、棟方芸術を開花させた民藝運動の三巨人、柳宗悦、浜田庄司、河井寛次郎との交流を紹介し、
さらには作品に名前が、文字通り刷ってある、岡本かの子や草野心平らとの関わりにも触れている。
これ一冊で、棟方志功の人となりと作品がわかるばかりでなく
どのようにして作品が生み出されていったのか、また彼の才能を、誰が開かせ、世界へと伸ばしていったのか
大変わかりやすく解説してある。
芸大だのパリ留学だのが、とかく評価の基準となっているように思われる我が国の芸術界において、
異色の存在でありながらも、その芸術性が広く世界で評価された、
青森出身の天才芸術家のすべてをコンパクトにまとめ上げた、すばらしい解説書だと思う。
金なしコネなしでも、才能さえあれば、こんな評価が得られ、さらに大きく花開かせる助けがやってきた、
昭和というのは良い時代だった、といえるのかもしれない。
各ページをめくるのが、とても楽しく、そして本物を見に行きたくなる一冊だ。
ログインしてコメントを確認・投稿する