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2026年07月03日21:26

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「逃亡者は北へ向かう」柚月裕子著

東日本大震災の最中、究極の状況下での殺人犯と、彼を追う刑事たちの物語。
クライムものというよりも、とても練られたヒューマンドラマで、面白かった。
読後感としては、切ない、哀しいという感情が。ハラハラやどきどきよりも勝る。

不幸な生い立ちの22歳亮は、真面目に働いていたのに、
嫉妬深い先輩に無理に連れて行かれたキャバクラで喧嘩に巻き込まれ拘置所へ拘留される。
ところが大地震と津波が発生し、釈放されたことから更なるトラブルに……

冤罪ではないけれど、腕の立つ弁護士が付いたなら、かなり軽い刑になりそうな状況の殺人事件。
なのに、真面目で有能な刑事たちは、殺人犯の亮を執拗に追い詰めにかかる。

ネタバレになるけれど、
亮が逃げるには、とても切ない理由がある。
どうしても行きたい目的地へがむしゃらに向かうのだが、
道中、幼児に懐かれてしまい、予期せぬ子連れの旅となる。

一方、追いかける刑事側の中心人物·陣内は、一人娘が津波で行方不明になる。
署内には肉親を失った者もいれば、そうでない者も。
その辺りの極限の人間模様の描き方もとても上手い。

というのも、この作家自身、岩手県出身で、津波で両親を亡くしている。
遺体安置所の描写は実体験に基づいているのだ。

作中、陣内の悪夢と亮の見果てぬ夢が、語られるのだが、
それぞれがあまりにも切なくて、読み手はうるうるしてしまうだろう。

うっかりしたら、号泣してしまいそうなクライムものだった。
これは唯一無二。
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