700ページ越えの大作で、本当に面白かった。私にとって間違いなく今年のベスト3に入るだろう。
「カフネ」はまだ読んでいないけれど。
図書館で予約したから、実物は全く見ていなくて、
受け取った時に、正直言って、あ、これは無理、と。
ササッとさらって返そう、とすら思った。
ところが読み始めると、たちまち引き込まれて。
焦らずに読もうと、自分を抑えるようにしての読書となった。
久しぶりに、読み切った達成感がすごかった。
アメリカ東部の風光明媚な岬で展開する、富裕層の老女たちの友情
とまとめきれない、奥深くて人間臭くて
しかし自然や土地そのものと深い関わりがある物語だ。
児童向けシリーズが人気の作家アグネスは、フィラデルフィアと
主に夏に滞在する屋敷との二重生活。
そして二重なのは住まいだけではない。
ずっと独身を通してきて、一番の友だちポリーと密に会っている。
彼女にはそれぞれ家庭を持った3人の息子がいて、
大学教授だった夫に従順な専業主婦として暮らしている。
物語は、80年にわたる友情を育んできた彼女たちの夏の屋敷がある
フェローシップ岬に、金銭目当ての開発の波が押し寄せて来そうなところから始まる。
とにかくアグネスの頑固ばあさんぶりに、まずはやられた。
この点で恐らく若者には向かない小説だろう。
でも、私には、さとうわきこの絵本ばばばあちゃんシリーズが連想され、
アグネスにものすごく引き付けられた。
ばばばあちゃん好きの人になら、受けるかもしれない。
また、アメリカ東部の古い家柄の富裕層の子女として育てられた人々の
立ち居振る舞いの描写が、例えばテレビドラマのダウントン・アビーとか
アガサ・クリスティの小説とかの英国を真似たようなスノビッシュな感覚が面白い。
気に食わないよそ者が、フランス系高級家具ブランドの、読まないLを発音するのに気がついてしまう、みたいな、そんな感じ。
気がついても、決して正してあげない、
つまり無教養な者は、そのまま恥を晒せ、みたいなスタンス。
もっとも、そんな直接的で下品かつ庶民的?表現は一切無いけど。
老女たちの話ではあるが、そこに後から若いシングルマザーで編集者のモードが加わりさらに面白い展開となり、
モードが幼い娘と岬を゙訪問したら、まさかの……
このような長編なのに、作りはソフトカバーで、
それでも米国ではベストセラーだからか、4500円もする。
先日のポール·オースターの最後の小説よりは、ずっと安いけれど、
これで売れるのかなと心配になってしまう。
とにかく、これを出版した早川書房に心からの敬意を表する。
迷っている選書担当の図書館司書さん、断然買うべし!
図書館から始まり、自分の手元に置きたいと思う(シニア女性)読者が、きっと現れるはず。
差別や無知や偏見と闘う米国東部のシニア女性の物語で、
ある意味、それは世界共通の闘いだと思う。
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