昭和末期の連続幼女殺人犯・宮崎勤のことに触れている、と聞いて借りた。
この作家は「掏摸」がとてもおもしろくて、期待して読んだ「教団X」は私には最悪で、
今作も、ちょっと気が進まなくもあった。
宮崎勤が犯行を重ねていた頃、私はちょうど埼玉県に住んでいた。
しかも高速のインターからほど近く、緑の多いマンションで、さらに近くに川が流れていた。
犯行の条件に、まさにぴったりと当てはまる。
後に埼玉県警で非常勤で働いていたとかアルバイトをしていたとかいう人からの話として、
ウチのマンションの写真も、宮崎の写真コレクションに入っていた、と聞いた。
夜、「ニュースステーション」の報道を一人で見ていたら、宮崎の犯行の残忍さにそれこそ背筋が凍る思いで、
全ての窓のカギなど確認してまわったことを思い出した。
思っていたより、あの凶悪犯についての記述は少なかった。
それは「あとがき」にもあるように、作者の想像が主であったからだろう。
が、たしかに「ネズミ人間のしわざ」みたいな事を言った、とか読んだ気がする。
死刑になったと報じられて、当然のことと感じた。
という経緯があるので、この小説はある意味過去の私の恐怖の元を解説してくれるかも、と望んだのだ。
宮崎の生い立ちやら狂気の様子について、少しは理解が深まった。
物語はわけのわからない状態で、男が別な人物になりすまをうとしているところから始まる。
やがて冒頭の男が入れ替わろうとしている人物の手記により、状況が明らかになってくる。
すると、主人公は精神科医で、患者の女性に魅かれていたと判明して・・・
登場人物は少ない。特に女性は、ゆかりという、あたかも魅力的な若い女のみ。
にもかかわらず複雑で入り組んでいるような仕掛けにしてあるのは、
主人公が自分の職業能力を利用して、ゆかりに催眠療法を試み、記憶を操作しようとする、
などなど、ちょっとB級ホラーっぽい様相もあるから。
なんだかなぁ〜と思いながらも読み切って、最後の最後、
「あとがき」の締めくくりの一文に、ほーっと。
また次作も注目してしまうことになりそうだ。
この作家の小説では、「銃」も良いが、なんといっても私の好みは「掏摸」
と改めて確認できたのだった。
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