直木賞作家の連作長編。問題作だと言えるし、とても面白かった。
1月から連載中の新聞コラムを読んでいるが、今まさに旬な感じの作家。
先の一篇の主人公は写真館の一人娘でカメラマンの新夏。
30歳を迎え、恋人の啓久から求婚された翌日に、
彼の母からの電話で、啓久が盗撮で捕まった、と知らされる。
ここから新夏の悩める日々が展開して行くのだが、
啓久の実姉や彼を紹介してくれた友人らの極端な意見に、新夏の心は大いに揺れる。
そして後の一篇は啓久を主人公として、とんでもない人物と遭遇したことから、
意外な方向へと進んで行く。
たった一回、しかも示談が成立し罪としての記録は残らないものの、
性犯罪という重しを背負ってしまった若い男性。
彼だけではなくて周囲の人生をも狂わせてしまう様が、
正義感vs打算 のような構図も加わり、
たいそう深刻で、情けなくて哀しい。
ホラーとは異なる、人の怖ろしさをたっぷり味わえるような巧みな長編だ。
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