mixiユーザー(id:7990741)

2016年07月18日15:27

205 view

「霧(ウラル)」桜木紫乃著

北海道文学と言えば、この人。
今回の舞台は根室で、ソ連からの引き揚げ者がたくさんいるような戦後ほどない時代。
目次の代わりというわけではなかろうが、
根室を中心とした地図があり、内地の読者には、大いに助かる。

ヒロインは、例によって、強くてそしていかにも哀しい生き方をしそうな珠生。
根室では名の通った水産業経営者の、三人娘の次女なのに、
親に逆らい家を出て芸者になっている。
そんな珠生が、前科ものとして裏社会を生きる決断をした男に恋をして・・

昭和の浪花節と見えても仕方ないし、漁師やら土建屋やら花街やら、
まるで昔風の陰気くさい物語か、と思いきや、
ドンパチとか義理とか、この物語の最中に広がっているはずの
男の世界は殆ど触れられず、まるで別物のように描かれるのは、
男たちを支えるヒロインの心の動きと行動だ。
そこが読みやすい。

妹としての珠生の目を通して
「幸せな結婚」をした姉の変貌ぶりが描かれていくのが、
なかなかの見もので、おもしろくもあり、ある意味怖くもある。

また、今回は釧路ではなくて、根室という町の特殊性から、
昭和の半ばごろの北方領土問題を、道民たちはどうとらえていたのか
少しは学ぶことができて、勉強になった。
国後島が、これほど道東に近い島だったとは、
ニュースのたびに地図をぼんやり眺めただけでは、意味なかったなぁと反省した。

ところで、要所要所で、ヒロインが深く考えて着る物を選ぶのだが、
その着物の種類や柄、帯との組み合わせに、
著者の知識とこだわりを感じて。興味深い。

女流作家の中には和服でメディアに出てくる人も少なくないが
私の知る限りこの作家の和装は、見たことがない。
最新刊もベストセラーにランクインしたみたいだし
これからの桜木さんの着物姿に、期待できる、かも?
(つまり、和服はお金がかかる、ということで)

1 7

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2016年07月>
日 月 火 水 木 金 土
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31