北海道文学と言えば、この人。
今回の舞台は根室で、ソ連からの引き揚げ者がたくさんいるような戦後ほどない時代。
目次の代わりというわけではなかろうが、
根室を中心とした地図があり、内地の読者には、大いに助かる。
ヒロインは、例によって、強くてそしていかにも哀しい生き方をしそうな珠生。
根室では名の通った水産業経営者の、三人娘の次女なのに、
親に逆らい家を出て芸者になっている。
そんな珠生が、前科ものとして裏社会を生きる決断をした男に恋をして・・
昭和の浪花節と見えても仕方ないし、漁師やら土建屋やら花街やら、
まるで昔風の陰気くさい物語か、と思いきや、
ドンパチとか義理とか、この物語の最中に広がっているはずの
男の世界は殆ど触れられず、まるで別物のように描かれるのは、
男たちを支えるヒロインの心の動きと行動だ。
そこが読みやすい。
妹としての珠生の目を通して
「幸せな結婚」をした姉の変貌ぶりが描かれていくのが、
なかなかの見もので、おもしろくもあり、ある意味怖くもある。
また、今回は釧路ではなくて、根室という町の特殊性から、
昭和の半ばごろの北方領土問題を、道民たちはどうとらえていたのか
少しは学ぶことができて、勉強になった。
国後島が、これほど道東に近い島だったとは、
ニュースのたびに地図をぼんやり眺めただけでは、意味なかったなぁと反省した。
ところで、要所要所で、ヒロインが深く考えて着る物を選ぶのだが、
その着物の種類や柄、帯との組み合わせに、
著者の知識とこだわりを感じて。興味深い。
女流作家の中には和服でメディアに出てくる人も少なくないが
私の知る限りこの作家の和装は、見たことがない。
最新刊もベストセラーにランクインしたみたいだし
これからの桜木さんの着物姿に、期待できる、かも?
(つまり、和服はお金がかかる、ということで)
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