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2017年06月25日14:02

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エレーナ・ポニアトウスカ『レオノラ』

 レオノラ・カリントンの生は過剰なほどロマネスクである。もしかするとただただ悲惨な一生を終わっていただけかもしれないということもいえそうだ。それは、わたしたち一般についてもいえる生きることの、あやふやさをもうかがわせる。ことにレオノラの場合は歴史的コンテキストが濃厚に関わってきていたのだから。
レオノラは本質的にヨーロッパ人である。ただ偶然の機会によりメキシコの土地で暮らすことになったが、時代の制約、つまりヨーロッパの危機によりそんな憂き目にあった人々はすくなくないわけである。
さて、こんにち、ディエゴ・リベラよりもフリーダ・カロのほうがインパクトがある画家だといわれることがある。ディエゴは社会的コンテキストを推し進めていったのにたいし、フリーダは個人の内奥を表現しようと試みたからである。その論理にしたがえば、レオノラはより個人の内側に根ざした世界を描いたのだともいえる。フリーダは肉体、レオノラは幻想、とでもいえるだろうか。
レオノラはメキシコの画家と見なされることに意味を見出せなかった。スイカを描いたことはないし、マヤの神話に惹かれたのみである。メキシコの画家はメキシコの意匠を用いるべきだという了解を超えている。国籍や時代を超えた絵画、それが好まれるべきなのかどうか、応えるのはやさしくない。
さいわいにレオノラは94歳という長命を得たので、メキシコ近現代史のみならず、この著作ではヨーロッパ現代史の詳細が綿密に語られていて興味がつきない。

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