mixiユーザー(id:163513)

2017年09月23日16:27

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角度

 
【角度】
 
 
おもいでにはとくゆうの角度がつく
たとえば少年期までをすごした家では
まどというまどがふきぬけのように
あかるくみえるせまい階下になじんだ
湿る黴くささにからだをわけいらせ
ずっとうえをながめ仰臥していたのだ
ひとについてどうみたかにも角度があり
くみふせて眼下にみたはかないかおは
こえをかけふりむかせたかんばせが
風をえて流線でぼけていたのとちがうし
あけに森が髪にみえひとをおもうのも
ふゆがれてうえのさみしい疎林を
みあげつつなにもかんがえないのも
おのおのちがう悲をあかしするだけだ
それでもいくすじかの鉛直のしずけさが
からだひとつのみちたりをみちびき
ひかりではないのにひかりをおぼえる
雲がただよってもすいへいには括れない
みることのなおらぬかわきがつづいた
たてものへのみあげがふるさにいりくみ
こころがあればうえからうたはおりる
うえがどのあたりかをさだめているのが
ひとの眼とくちの位置だというきめが
からだからはなれられぬ詩の悲だし
おもいでひとつがべつの角度をつなげ
そのときそのときを齣わかれさせる
こころぐるしさにもさいなまれる
角度などそんざいしなければよかった
うちひしがれてからだをはこべば
しぬのもまた天空の決壊にひたむかい
そのまま天にきえることにすぎない
やがてはうえからの角度だけをおもい
うつりゆくようになってひとは吊られる
あしもとにのめりこんでたおれても
おとずれる縊死のうわぬりがあるのだ
さいごの角度はいつでもうえからで
詩はその降下をあらかじめおもい
そこに含羞をとおくひびかせている
 
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