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2017年09月16日16:10

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よさめ

 
【よさめ】
 
 
あめのやんだのに気づかぬふりで
夜道でこうもりをさしつづけた
もとより傘をかざすひとのすがたが
奇体かつはかないのがせつなく
よるには足のはこびがうかび
かおのきえるのさえおもいだした
ささげかかげるもののないこの世に
わかれのあいずをときはなとうと
かるくよるをかかげているのだ
みみのおもいで、こめかみのひろがり
みずからのみをまもりぬきながら
うごく家にすまうやどかりのように
まえへこころをやることもなく
傘そのものがあゆみゆくふぜいで
あやめのあったくろいあたりをすぎ
木橋をわたって、分割されたのち
なにかのにおいを肺腑へみちびくと
くろいほのおというべき身がゆれ
どこをたどろうとありえた草はらに
ことさらあゆみの彎曲をしるした
さんぶんでない日本の詩ならば
ひやくする俳句のかんけつをゆめみ
なおもうたでなさけののびる不如意を
かきものがあゆまねばならないが
傘でかおをかくしくらやみをゆくと
日本の詩がいよいよほそくなって
きれいなおんなになりかわる気がする
ましてや傘をさしたままあいしあう
そのためのだれかれをよぶように
かかげるこうもりのさわぐこえがある
さす傘はひとつを宰領するさまをしるし
ひとつだけしかなじまないともしめす
それでもいきているならからだは
ぬれているとかわいているをわかたず
ここからかしこへとのびゆくだろう
匿名でしかありえない詩をおもいつつ
こうもりへ夜のすべてもおりていて
くらやみがそれぞれのはなやかさになり
いつ傘をとじるのかわからないことも
かかげるからだのいさおしとかわる
よるという、どうしようもないまひる
どうちゃくをくちにすればまたもあめで
ふるあめはひとつをふくすうにできた
 
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