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2015年09月02日08:38

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札幌に帰ると

 
【札幌に帰ると】
 
札幌に帰ると、途端に詩的環境に早変わりする。不在中配達された詩書が届いているし、部屋にはまあ本が鬱蒼とならんでいる。凛冽さにつつまれて、気分がひきしまる。
 
まずは、掲載のお知らせを。
 
「現代詩手帖」9月号では4月の鮎川信夫賞授賞式での壇上談話が掲載されています。岸田将幸さんとぼくの受賞挨拶のほか、ぼくの関連では北川透さんの選評=祝辞と、神山睦美さんの祝辞。どちらもとても嬉しい。ぼくの受賞挨拶を読みたいという声が、以前このフェイスブックにあったけど、今号に載っています。
 
「現代詩手帖」同号では、表3に、次の「思潮社オンデマンド詩集」の刊行予告が載っています。田中宏輔さん(またもや3冊同時刊行!)と、松本秀文さんの7年ぶりの新詩集、それにぼくの新詩集『束』(いよいよタイトルが公になった)。ぼくのはまだ表紙デザインが確定していないのでいつの刊行(オンデマンド・サーヴィス開始)になるかわからないけれども、9月中には出してもらえると、とおもっています。気恥しいけど、編集部(たぶん亀岡さん)作成の惹句を転記打ちしておくか。
 
《漢字1文字のタイトル、20行の定型、鮎川信夫賞受賞『換喩詩学』で自らの詩論を展開した詩人が、磨き上げた詩法で「詩」の結界をつくりあげる。昨年の3冊同時刊行に続く新境地の新詩集。》。――はっきりいうと、「減喩」で書かれた詩集です。乞うご期待。
 
ご近所在住・海東セラさんの個人誌「ピエ」も届いていました。ぼくは敬愛する細田傳造さんとともにゲストで招かれ、「馬の音」という詩篇を寄せています。ネット未発表。自分でいうのもなんですが、気に入っています。入手希望のかたはこっそりメールください。海東さんにリクエストしてみます。手許にはまだ一冊しかない。
 
阿部日奈子さん編集の「ユルトラ・バルズ」は、中本道代さんに送っていただいた。巻頭に中本さんの素晴らしい詩篇がある。そこに私信とコピーが挿しこまれていて、こないだぼくが書いた中本詩「mother」の解釈につき、触れられている。ぼくは迂闊にもこの詩篇にある(母の)「退院」を病死ののちの遺体引き揚げと捉えず、字義どおりに「退院」と解釈してしまった。よく読むと、母の死、その病気の質を示唆する細部がたくさんあるのに。
 
そうしなかった理由は、立方形表象のつづく空間的換喩詩と読みたい志向があったためだとおもう。ところが寛容な中本さんは、ぼくのそんな読み筋を、詩自体の読み筋としてはありえる、むしろ嬉しくおもったと書いてくださっていた。とりあえず胸をなでおろした、というべきところだが――
 
この失敗にはほくの文献捌き上の弱点が露呈してしまっている。実は中本さんからは、この「mother」自解も収録されている、心の澄むエッセイ集『空き家の夢』もとおいむかし恵投されていて、この本を絶賛した短文もどこかに書いた記憶がある。ところが該当文章の存在そのものを失念していた。「読み」を独立させるにせよ、作者の述懐ではこうなっていると、注記する責務があったことになる。単行本収録のときにはそうしよう。
 
さて昨日は藤井さんから届いていた貞久さんとの対談起こし原稿の赤入れに晩から未明、とりくんだ。ゲラ郵送→赤入れ返送という伝統的なやりとりが単行本以外ではなくなって、添付メールのやりとりに変化すると異様に時間がかかる。ワード文書に、訂正追加部分を黄マーカーで書きこんだり、削除部分に赤マーカーを入れるのはまだよいが、PDF原稿にたいし何頁何行目と明示しながら、文章で指示をねがう直しを入れる場合など、とりわけ疲弊してしまう。今回はワード添付で良かった。
 
対談原稿での赤入れのコツというか倫理につき、最後にしるしておこう。
 
●とうぜん相手の発言は直さない(ただしケアレスミスや記憶ちがいについては示唆したほうが親切)
 
●口語表現によって冗長になっている自分の発言については口語調を維持したまま引き締め、字数削減に協力する
 
●それで字数的余裕が出た場合は、発言したはずだが割愛されてしまっている自分の重要発言にかぎり復旧させる。ただしこの場合も字数圧縮に努める
 
●自分の直しによって対談文脈が壊れないようにする
 
●当日語っておらず、ゲラチェックの段階で想起された重要事は、補う意志があれば( )表記で補うのが現在のルール(「後日註」と括弧内冒頭に但し書きするとなお良い)
 
●対談の再現忠実性よりも、論脈の単純化・整理を優先させる
 
●「(笑)」はあとで足さない。それを削除する変更ならありうる。現在のこのみではないほうが良い
 
●編集部から、「よりわかりやすい説明を」と書きこまれている場合は、その要請にこたえる

●記憶による引用は精確を期す。出典などを書き込んでも可
  
――こんなところかなあ。ともあれぼくのパートのみであっても、直しを入れたら、全体がいよいよ引き締まった。貞久さんはどう訂正するか。出来上がりが愉しみ。藤井さんには、貞久さん書き入れ後の文書をさらにみたいとリクエストしました。
  

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