mixiユーザー(id:7990741)

2020年10月17日00:17

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「ひこばえ」重松清著

厚い2巻に亘る、父と息子の物語で、本当に面白かった。

主人公の洋一郎は55才で、高級老人ホームの施設長。
小学校低学年だった大阪万博の頃に両親が離婚した。
ところが、それ以来音信不通だった父が急死したと知らされる。
離婚の原因は、その父が作った数々の借金など。
特に、彼が出ていった頃には多感な年頃だった姉の、
父に対する恨みつらみは激しくて大きい。

最期に一人暮らししていた安アパートに行くと、
人の良い高齢の大家さんがいて、
少しずつだが、父の生前の暮らしぶりがわかってくる。
その過程がとても面白い。

また、各所に笑いのネタが散りばめられていたり、
昭和後期の、あるあるネタも楽しくて、
重いテーマを少し和らげている。
児童書カロリーヌ・シリーズやら即席ラーメン等の懐かしい物たちが、
昭和生まれの読み手の心をぐっとつかむ。

孤独死した老人の人生を、生き別れの息子がたどる過程で巡り会う、
故人の数少ない友人達が個性派揃いで、
テンポの良い会話の展開が生き生きと愉快だ。

洋一郎は亡くなった父の部屋で、寅さんシリーズを見つける。
この物語はそんな人情味たっぷりの長編だった。
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