書評からはあまり魅力に感じなかったのに、借りて読んでみたら、
とても読みやすく面白かった。特に最後に向けては引きこまれた。
主人公は二人の30代の美しい女性。
料理教室を開いている実日子は夫を1年ほど前に亡くしたばかり。
もう一人のまりは、子供のいない妻で、夫との仲は冷えきっている。
つまり、タイトルの「いない男」というのは、生死に関わらず、夫のこと。
舞台は下北沢周辺。
実日子の料理教室を含めて、
美味しそうな料理の描写が頻繁にでてくるのだが、
どれも詳細に調理のコツに触れられていて、
食べたくなるばかりでなく、作りたくもなってくる。
そして、食べることが、男女の仲に与える影響の大きさ。
恋愛小説で、しかもいわゆる浮気の気配濃厚で話は展開するのだが、
ドロドロとは一線を画した小説になっているのは
配偶者にかかわらず親しい家族を亡くしたばかりの人の、
本当に辛い心情の描き方が、とても見事だからかもしれない。
大人の恋愛ものと括るには、ひと味も二味も違う
上質なお話だった。
まさか物語を読んで、「これ作ってみよう」と本気で思える家庭料理が出てくるとは。
「わかったさん」や「こまったさん」を子供に読み聞かせして以来だ。
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