mixiユーザー(id:7990741)

2020年11月01日11:14

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「家族じまい」桜木紫乃著

連作短編集仕立ての長編、とても面白かった。
舞台は釧路、江別、函館などで、
この作家の地元北海道を鮮やかに描きながら
年を取って行く家族の、切るに切れない繋がりや情愛、更に嫉妬や憎しみを
そこここに名言を振る舞いながら紡いでいく。
家族の血縁はあっても、
「みな、自分が選んだ自分を生きている。」

第一話の主人公・智代はアラフィフの理髪師だが、
二十代バツイチの農協の窓口職員、サックス奏者から、八十代の旅館の仲居まで
それぞれの話で、様々な職業や立場の女性を描きながら
軸になるのは認知症の妻と若い頃から横暴な夫との八十代夫婦だ。

緩やかにバラバラに崩れて行く家族の物語でありながら、
改めて自分一人で或いは夫婦で生きていこうとする大人達の話でもある。

直木賞受賞作「ホテルローヤル」のその後を描くと書き始めたとのことで、
家族はいつまで続くのかを問うている、と新聞のインタビュー記事にはあった。

実の娘よりも、認知症になった自分の妹を愛しく可愛がる、
という一編があり、それこそ桜木作品の真骨頂かもしれない。
あまり現実味がない気もするが、それを描ききって見せるところが、
この作家の巧さなのだ、と改めて感心した。

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