この作品も読むのにひどく時間がかかった。ディストピア風のタッチ、読んでいて重苦しさが伝わってくる。しかし時々、稲妻のように詩的フレーズが舞い込んできてハッとする。するとこの作品の裏には何があるのだろうと勘ぐってしまう。そんなことを考えていると。はたして読み終わるときがくるのだろうかと案じてしまう。つまり作品のなかで翻弄されているのを嗜好するようになってしまう。はたしてこれが読書だろうか(笑)。しかしそれでも最後まで読んでくるとイシグロの「わたしを離さないで」と似通ったテーマが扱われていることに気づく。そうだったのか。読んでいるあいだ、ストーリーのみならず、わたしまでが、どこへ辿り着いてしまうのか、気が気でなかった。
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