mixiユーザー(id:1299833)

2023年02月23日10:14

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トマス・トライオン『悪魔の収穫祭』(上)(下)(角川文庫)

 周知のようにニホンの近代文学は、いわゆる共同体の桎梏に疲弊し、嫌悪し、逃亡して個の自由を謳いあげるもの。その過程では禁忌を踏みにじることも欠かせない。もちろんそれはニホンにかぎったことではなく、近代世界に共通するものだともいえる。
 ところが今では都市文明に飽き、土に帰ろうというのでUターンを目指すひとたちもいる。新参者が田舎の社会に馴れ親しむのは容易ではない。しかしそれも世界の各地でみられることで、とくに目新しくもない。
 ただ共同体の力学ということで、排除の思想が強化されることがあり、それによって共同体は求心力を確認していくことになる。
 それらは、社会人類学の範疇に属すること。説明し、叙述すること自体はそれほど厄介なことではないかもしれない。でも自らの身を通してそんな複雑さやら矛盾にさらされていくのは、ときとして戦慄にまでいたる。共同体の成員にとっては当たり前のことが外部の者にとってはおぞましく映ることがある。それはホラーにさえいたる道。
 そんなふうにわたしはこの物語を頭で理解することに努めた。それはなぜか。生のホラーにさらされたくなくて、醒めていることを自らに強いたのか。そのへんは曖昧だ。まあ、どんな作品にもいろいろな見方があるということか。
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